<新型コロナ>10代死亡…家族「震えている」、重症化するも医療機関は「満床」 そのとき現場では
新型コロナウイルスに感染したさいたま市の10代後半の男性が9日に死亡した事案で、男性が7日朝に救急搬送された際、救急隊は医療機関に延べ11回連絡、現場に69分間滞在し、「救急搬送困難事案」だったことが17日、市消防局救急課への取材で分かった。オミクロン株の感染拡大による第6波で、市内の救急搬送困難事案の増加傾向が続いている時期だった。
救急課によると、1回目の119番は6日午前5時34分。「自宅療養中の家族の様子がおかしい、震えている」などの内容だった。救急隊は9分後に現場到着。体温は41度だったが、血圧や血中酸素飽和度は正常で、意識ははっきりしていた。保健所に連絡して、市内医療機関から発生届が提出されていないことが判明。保健所が医療機関に発生届の提出を求めるなど対応し、救急隊は家族に説明して搬送せずに引き上げた。
2回目の119番は翌7日午前7時34分で、「ぐったりして反応がない」などの内容だった。救急隊は9分後に現場到着。意識レベルが低下していたため、重症と判断した。市立病院を含め市内に3カ所ある救急救命センターへの受け入れを要請した4回を含め10回連絡したが、「満床」などと断られ、10カ所11回目に市外の医療機関への搬送が決まった。現場滞在時間は69分で、医療機関まで35分かかり、到着は午前9時28分だった。
市立病院医事課は取材に「個別の案件はお答えできない」としながら、受け入れは困難だったとしている。当日は医師が新型コロナではない別の救急患者に対応。5床あるコロナの重症用ベッドは今年に入って間もなく満床が続いている。コロナ患者を受け入れるため、一般病床を減らしており、「当日の状況によって、医師が判断して受け入れることもあるが、厳しい状況が続いている」と説明した。
搬送先を見つけるまでに、現場滞在時間が30分以上で、医療機関への受け入れ照会が4回以上の場合、救急搬送困難事案とされている。同事案は今年に入って市内で増加。1月3日の週に114件と前週より31件増、その後も158件、175件と増え続け、同24日の週は206件でピークに達した。同週は21年の102件の約2倍、20年の27件の約7・6倍。翌週は185件と下がり、男性の事例が含まれる2月7日の週は速報値で171件だった。
男性は2日に発熱、3日に医療機関を受診して、抗原検査で陽性と判明。40度前後の高熱が5日間続いた。7日に救急搬送され、9日に搬送先の医療機関で死亡した。発生届は陽性判明から3日後の6日に提出され、医療機関は保健所の聴き取りに「その日は陽性者が多く、処理が追い付かなかった」と説明しているという。