超攻撃サッカーに隙 昨季の堅守見る影なく 今季13位に終わったJ1浦和 国内で実績ある選手、現役の代表選手加入でシーズン前には優勝候補筆頭も…ファン・サポーターを大きく失望させる結果に
浦和の今季の成績は12勝12分け14敗の13位。優勝を目指していたチームとしては、ファン・サポーターを大きく失望させる結果になった。一年を通して安定しない戦いぶりに、主力選手の流出、監督の交代、レジェンドの帰還など波が激しいシーズンだった。
■超攻撃サッカーに隙
ノルウェー人のヘグモ新監督を招き、国内で実績のあるチアゴサンタナ、前田(さいたま市出身)、渡辺(東松山市出身)、現役スウェーデン代表のグスタフソン、ノルウェー代表のソルバッケンなど他チームがうらやむ陣容をそろえた。強化部の精力的な戦力整備もあり、シーズン前には優勝候補筆頭の声も上がった。
ところが、歩みを進めた「超攻撃サッカー」はもろ刃の剣だった。前がかりになり前線に人数を集めたため、ボールを奪われてからはショートカウンターの餌食になった。昨季ベストイレブンに選出されたGK西川、DFショルツ、ホイブラーテンらもなすすべなく失点を重ねた。
堅守は見る影もなくなり、年間27失点だった昨シーズンの記録に半分の19節で到達してしまうほどだった。ほぼ最終ラインだけで守ることが求められたため、負担が増えた守備の選手の顔は曇り「去年とプレーを比べられるのはフェアではない」との言葉が上がった。
新体制発表の席で当時のテクニカルダイレクター(TD)だった西野氏は「一歩足りないところがあったので、そこを埋めるためにヘグモ監督に来てもらった」と話した。ふたを開けてみれば、攻撃意識に比重が寄り過ぎ、昨季積み上げた守備力は後退した。第4節の湘南戦で4―4の打ち合いとなった試合のように、取られても取り返せれば見栄えは変わったが、決定力にも波があった。
チームの不調と呼応するように主力選手の流出が相次いだ。主将の酒井をはじめ、ショルツ、岩尾、伊藤と中心選手が続々とクラブを離れた。活躍が期待されたソルバッケンに至っては、けがもありわずか6試合に出場して期限付き移籍を満了。6月いっぱいでイタリアに帰った。
シーズン中に選手が移籍することは珍しいことではないが、強化担当の西野TDが退いたことはクラブの不穏な空気感を象徴していた。後任として堀之内TDが就任。夏には二田、本間、長沼といった実力者を補強したが、8月26日付でヘグモ監督は契約解除となった。攻撃サッカーの理想は形になることなく、後任に託されることとなった。