埼玉新聞

 

<渋沢栄一の新1万円札発行> 地元深谷、全国から脚光 盛り上がり継続が課題 旧渋沢邸「中の家」は今年10月に来館者10万人を達成

  • 今年は大勢の観光客が足を運んだ「中の家」。昨年8月のリニューアルオープン後、今年10月には来館者10万人を達成した=9日午後、深谷市血洗島の旧渋沢邸「中の家」

    今年は大勢の観光客が足を運んだ「中の家」。昨年8月のリニューアルオープン後、今年10月には来館者10万人を達成した=9日午後、深谷市血洗島の旧渋沢邸「中の家」

  • 今年は大勢の観光客が足を運んだ「中の家」。昨年8月のリニューアルオープン後、今年10月には来館者10万人を達成した=9日午後、深谷市血洗島の旧渋沢邸「中の家」

 「日本資本主義の父」といわれる深谷市出身の実業家渋沢栄一が肖像となった新1万円札が7月3日から発行された。市内では関連イベントが多数開かれ、市内にある栄一の関係施設にも大勢の観光客が殺到し、市内は大きなにぎわいを見せた。新1万円札発行に合わせた行事は終わって一段落したが、今後に向けて盛り上がりをどう継続させるかが課題になっている。

 今月9日午後、深谷市血洗島の旧渋沢邸「中の家(なかんち)」。渋沢栄一翁の精神を学ぶ企業研修担当者向けモニターツアーが初開催されていた。同ツアーは新たな切り口で社員研修を検討中の人に体験型研修を提案するもの。祖父が栄一との関わりがあり、栄一に関する著書を執筆しているディセンター社長の折原浩さんも同行した。

 参加者たちは渋沢栄一記念館を訪問後、栄一が愛した煮ぼうとうを食べ、中の家や尾高惇忠生家、誠之堂・清風亭を巡った。参加した男性らは「初めて来たが、渋沢栄一の対応力の高さが感じられた」と満足そうだった。主催した県観光課の担当者は「渋沢翁の精神を学び、一人でも多くの人に周辺の観光スポットの周知を図れれば」と語った。

 中の家は昨年8月にリニューアルオープンし、今年10月に来館者10万人を達成。渋沢栄一記念館の来館者は大河ドラマ「青天を衝(つ)け」の影響もあり、2021年度が24万人で、22年度は10万人、23年度は8万人と減少したが、本年度は11月までで11万人に増加。渋沢栄一の公式ロゴマークと肖像写真は、使用申請件数が昨年度88件から本年度193件に、95件から165件にいずれも増加した。

 市内にある道の駅おかべは栄一関連商品が約130種類あり、大勢の観光客が訪れている。同駅の香月幸生駅長は「売り上げは絶好調で、昨年より1・2~3倍ぐらいに増えた。栄一関連商品は落ち着いてきたが、団体客は増えている印象がある」と話した。

 市内では新1万円札発行に合わせて、大小さまざまなイベントが開催され、大勢の来場者でにぎわいを見せた。来年3月8、9日には将棋の「ALSOK杯第74期王将戦」7番勝負第5局の開催地が中の家に決まっている。だが、仮に藤井聡太王将か挑戦者の永瀬拓矢九段が4連勝すれば、第5局は開催されない可能性もある。今後は盛り上がりを一過性に終わらせず、いかに継続させるかが鍵になる。

 市渋沢栄一政策推進課は「新1万円札が発行された7月や渋沢栄一の命日がある11月に合わせてイベントを行いながら、渋沢栄一の精神を広げていきたい」と強調。20日に行われた定例会見で小島進市長も「大きくメディアに取り上げられ、渋沢イコール深谷というイメージは浸透した。盛り上がりを一過性にしては駄目で、全国の団体や自治体とのつながりを大事にしていきたい。渋沢の名前だけでなく、精神も広めていければ」と話していた。

【新1万円札】 深谷市出身の実業家渋沢栄一が肖像となった新1万円札が7月3日から発行を開始。約20年ぶりにデザインが刷新され、福沢諭吉だった1万円札の肖像が変わるの約40年ぶりだった。紙幣は偽造防止のため、傾けると肖像の顔の向きが変わる3Dホログラム技術を世界で初めて取り入れた。

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