「わたしは、にんげん、といいいます 仲良くできますか」…言葉の超越的なイメージ、独自の感性で来場者の心を魅了 萩原朔太郎賞を受賞、詩人・杉本真維子さんが作品展 ふじみ野で25日まで
「わたしは、にんげん、といいいます 仲良くできますか」「望みは言葉そのものになること、何者でもなく何者でもある位置で生きぬくことです」ー。詩集「皆神山」(思潮社)で2023年の「第31回萩原朔太郎賞」を受賞したふじみ野市在住の詩人杉本真維子さん(51)の作品展「杉本真維子巡回展」が、同市大井中央2丁目の複合施設「ふじみ野ステラ・ウエスト」1階ギャラリーで開かれている。同展は25日まで。入場無料。
受賞作のうち、杉本さんが自薦した作品と解説を高さ約1メートル、縦横各約50センチのボックスの上に掲示した12点や15年前に信濃毎日新聞で30回にわたり連載した15組の作品と解説などが展示されており、紡がれた言葉の超越的なイメージと反転性など独自の感性が来場者の心を魅了している。
杉本さんは長野県生まれ。大学卒業後、第1詩集「点火期」を発表。07年に刊行した第2詩集「袖口の動物」は第58回H氏賞、14年の第3詩集「裾花」は第45回高見順賞、第4詩集の「皆神山」が第31回萩原朔太郎賞をそれぞれ受賞。現在は日本現代詩人会副理事長を務めている。
萩原朔太郎賞の受賞を受け、萩原氏の出身地、群馬県の前橋文学館で今年6月から9月まで、杉本さんの巡回展を開催していたことから、市在住の詩人の作品展を開催しようと、市が同文学館に打診。今月12日から同展を開くとともに、作詩のワークショップや記念講演会を開いている。
「皆神山」は24編を収録。このうち、「えにし」や「ぼけ」など6編を展示。「かいこ伝説」は、脇目も振らず桑の葉をはんでいる蚕を「命なのに目的が付与されているようなふしぎな生き物」と表現。最後は擬人化した蚕が「ちょっと、あっちへ行ってくれない?」と叫んでいる。
杉本さんは「現代詩は意味だけでなく、音、リズム、表記の視覚的感触などさまざまな要素から組み上げられている。それは譜面に例えられ、詩人は作曲家、読者は演奏家です。どんな音色を奏でるかは読者の皆さまの自由に大きく委ねらえている」と来場を呼びかけている。
問い合わせは、同施設(電話049・261・0648)へ。