埼玉新聞

 

<月曜放談>サッカー界発展のため、サッカー王国埼玉の復活を 日本サッカー協会会長・田嶋幸三氏寄稿

  • 田嶋幸三氏

 ワールドカップ(W杯)カタール大会アジア最終予選で、日本は1月27日の中国戦、2月1日のサウジアラビア戦に勝利した。国内が新型コロナウイルス感染拡大の「第6波」に見舞われる中、重要なホーム2連戦を埼玉スタジアムで戦えたことに対し、埼玉県をはじめとした関係する皆さまに感謝したい。埼玉の地で開催できたことは、大きくプラスに働いたと思う。

 勝ち点18でB組2位の日本は、今月24日にアウェーで行われる次のオーストラリア戦で本大会出場が決まる可能性がある。だが、まだ何もつかんではいない。この試合に勝ち、29日に再び埼玉スタジアムを使わせていただける最終戦のベトナムにも勝たなければならないと思っている。そして、カタールへの切符をしっかりと勝ち取りたい。

 日本サッカー協会は昨年、創立100年を迎えた。その中で、埼玉のサッカー界が大きな役割を果たしてきたことを知っていただきたい。Jリーグが誕生して30年になるが、それ以前は埼玉県内の多くの指導者、県出身の選手の熱意と努力に日本サッカーは支えられていた。もう一度、埼玉が日本サッカーの中心になってくれるのを期待している。

 そのためには、少年サッカーの指導を考え直す必要があるだろう。私の浦和南高校時代の恩師である松本暁司先生をはじめ、多くの指導者が情熱を持って浦和や埼玉のサッカー発展に貢献されたように、少年から高校まで、クラブを含めてぜひ、育成年代を足掛かりとしてサッカー王国埼玉を復活させてほしい。

 私がこう願うのは、今後もサッカー界が発展するためには、子ども時代から競技に親しみ、指導者や保護者ら大人たちもさまざまな形で関わること、つまりサッカーが地域の文化として根付くことが大切だと考えるからだ。かつての浦和を中心とする埼玉は、そんな土地柄だった。

 そのための第一歩になればと、私たち日本サッカー協会は12歳以下のサッカー選手とフットサル選手の登録料を来年度から免除することを決めた。1人700円(フットサルは500円)の登録料を取らないのは小さなことかもしれないが、多くの人に日本サッカー協会のメンバーになっていただき、一人一人とつながりたい。次の100年に向け、一時的な登録料の減少よりも、たくさんの人々が一生サッカーに関わってくださることの方が価値があると考えている。

 私は1983~86年、当時の西ドイツに留学したが、西ドイツサッカー協会は登録料を取っていなかった。日本もこうなればいいなと思ったのを覚えている。以来、私はドイツのサッカーとサッカー協会をお手本としてきた。64年の東京五輪に向け、コーチとして日本に招かれたデットマール・クラマー氏の給料を払ったのも当時の西ドイツサッカー協会だ。ドイツサッカー界は、指導者養成やさまざまなノウハウを包み隠さず教えてくれた。私たちも、そういう協会でありたい。

 8回にわたる本稿も、最後となった。会長の立場にありながら、埼玉のサッカーに偏っていると感じた読者もおられよう。だが、埼玉のサッカーが発展すれば、間違いなく日本サッカーの発展にもつながる。1年間お読みいただき、ありがとうございました。

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