埼玉新聞

 

コロナが阻む震災復興支援…ボラ団体休止 でも諦めない大学生ら新団体作り防災講座 継ぐ後輩 #知り続ける

  • 中学生に防災講座を行う山下佑太さん=2日、東京都北区の聖学院中学校・高校

  • 山下さん(中央)の講座を引き継ぐことを誓う田所陽登子さん(左)と志賀瞳さん

 新型コロナウイルスの感染拡大は、東日本大震災関連のボランティア活動にも影を落としている。学生が被災地の岩手県釜石市を訪れ、復興支援を行ってきた聖学院大学(上尾市)は、2021年3月で復興支援ボランティアチーム「SAVE(セーブ)」の活動を休止。20年春に始まったコロナ禍以降、現地訪問できなくなったのが響いた。そんな状況下で、取り組みの継続を模索する学生もいる。

 東京都北区の聖学院中学校・高校で2日、中学校1年生を対象とした防災講座が開かれた。講師を務めたのは、OBで聖学院大4年生の山下佑太さん(22)。同大2年生の田所陽登子さん(20)と志賀瞳さん(20)も、司会などでサポートした。聖学院小学校5年生の時、校内で大震災を経験した山下さんは、当時の様子を語りながら将来の地震に備える重要性を強調。この春卒業して就職するため、「今日が最後の講座。集大成にしなければ、と力が入った」と全てを注ぎ込んだ。

 山下さんはSAVEのメンバーとして釜石市を訪問するのと併行して、2年生だった19年から有志の仲間らと一緒に小中学生を対象とした防災講座を始めた。「現地の活動を通して得た学びを自己満足だけで終わらせず、いろいろな世代に伝えたい」と山下さん。次の大震災は日本のどこでいつ起きても不思議ではないことから、対策の大切さを説くことにしたという。

 一方、大震災発生の11年から活動してきたSAVEは、コロナ下で苦境に陥る。オンラインツアーを企画するなど工夫を凝らしたものの、現地で直接支援や交流ができず、新メンバーが入らなくなった。震災10年を迎え、復興支援に重点を置いた被災地との関係も変化を求められたこともあり、昨年3月で活動停止。ボランティア活動支援センターでアドバイザーを務める川田虎男さん(42)は、「新陳代謝が早い学生の取り組みが1年以上できないのは痛い」と継続の難しさを感じる。

 だが、昨年春以降、被災地でボランティアをしたいと希望する複数の学生が同センターに相談したことから、夏に再びオンラインツアーを実施。彼らを中心として、新団体の「リアス」が誕生した。

 SAVEの活動休止後も、防災講座を続けた山下さんの下には後輩が加わる。小学校から聖学院で学ぶ田所さんは、山下さんを知っていたこともあり、2年生になって講座の運営に参加。同じ学科の志賀さんも誘った。福島県いわき市出身の志賀さんは震災当時小学校3年生で、川越市内に一時避難した経験がある。志賀さんは「ボランティアをするなら、被災地の復興支援に携わりたかった」と話す。

 2人はリアスにも参加。新たな組織は東日本大震災の教訓を未来に伝え、防災に役立てることを活動の柱に据える。そのため、山下さんの取り組みはリアスが引き継ぐ。田所さんは「リアスのメンバーにも手伝ってもらいながら、一緒に防災講座を開きたい」と意気込む。山下さんは「コロナがなければ上尾市内の小学校でも講座を行いたかったができなかった。心残りの部分は、後輩たちにやってほしい」とバトンを託した。

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