埼玉新聞

 

「ありがとう」親族が夢で感謝 大震災から11年、80人が黙とう 埼玉・加須の旧騎西高で3年ぶり追悼式

  • 献花台の前で手を合わせる参列者=11日午後2時42分ごろ、加須市騎西のSFAフットボールセンター(旧県立騎西高校)

 約2万2千人の犠牲者を出した戦後最悪の自然災害、東日本大震災から11年となった11日、加須市騎西の旧県立騎西高校(現・SFAフットボールセンター)には、原発事故などによって双葉町から避難してきた人々など約80人が集い、同町の方向に黙とうをささげた。追悼式は双葉町埼玉自治会が主催。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で2019年以来、3年ぶりに同校で実施された。加須市などによると、同市には現在、双葉町から避難してきた138世帯374人が生活。県内には2739人の避難者がいる。

 追悼式には双葉町からの避難者の他、震災当時から炊き出しなどのボランティアに参加してきた女性、学校で福島県と交流活動をする教員ら多くの人が参列し、祈りをささげた。

 追悼式に参列した関根茂子さん(71)は震災で親族3人を亡くした。「昨日、一昨日と寝ているときに(親族が)夢に出てきて、『ありがとう』と感謝の気持ちを言ってもらった。黙とうでは、親族にこれまであったことを伝えた」と声を詰まらせた。11年という期間は「長いようで短い」と語り、「追悼式をやってもらい感謝している」と口にした。

 関根さんの友人佐山ロサリオさん(56)は「厳しい毎日だった。家族バラバラになってさみしい」と話すが、「(加須の人らに)恩返ししていく。みんなで頑張る」と前向きな気持ちも見せた。

 追悼式には同市の大橋良一市長らも出席。大橋市長は「前を向いて生活してもらえるように心から祈念申し上げる。これからも頑張っていきましょう」と参列者に呼び掛けた。

 双葉町埼玉自治会長の吉田俊秀さん(74)は「あらゆる行事が中止になっても、追悼式だけはやりたかった。3月11日は思いが違う。ここ(旧騎西高)でできたことが良かった」と思いを語った。

ツイート シェア シェア