30年以上の悲願…埼玉・長瀞の岩だたみ通り商店街の町道が「ホコ天」化 安全に楽しめる長瀞つくっていく
長瀞岩だたみ通り商店街(長瀞町長瀞)内の町道主要幹線2号線で25日から交通規制が始まり、自転車を含む一般車両の進入が午前9時~午後5時は禁止となる。同町道は、歩行者と車両との交通トラブルが相次いでいた。「観光客に安全に買い物を楽しんでもらい、コロナ禍で疲弊している町観光を活気づけたい」。同商店街関係者の地道な署名運動が実を結び、30年以上の悲願だった「ホコ天」化が実現した。
秩父鉄道長瀞駅踏切下から始まり、観光名所の岩畳に通じる「岩だたみ通り商店街」の町道(全長約170メートル、道幅約4メートル)は車1台が辛うじて通れるほどの狭さに、飲食店など約20軒が並ぶ。毎年行楽シーズンには多くの観光客でにぎわいを見せるが、岩畳を目指して自動車や大型バイクで通行する観光客らが目立ち、歩行者との接触や物損事故が頻繁に起こる「危険な道路」として地域住民から懸念されていた。
「大きな事故が起きてからでは遅い」。同商店街の酒販店「リカーショップひふみ」店員の小林弘美さん(59)は危機感を募らせ、昨年3月から交通規制を求める署名活動を始めた。同町道は、主要幹線2号線の区間内にあり、その一部のみに交通規制を実施するのは、秩父署や町、公安委員会の許可以外に、商店街関係者や地域住民全28軒の同意が必要だった。
小林さんによると、同様の署名活動は商店街関係者らが30年以上前から数回実施しているが、毎回全員の同意を得られず頓挫していた。通行止めになることで「卸問屋の配達が不便になる」「生活道路として利用できなくなる」などの理由から、署名をためらう人がいたためだ。
「今回も全員の同意は得られないかもしれない」。小林さんは一抹の不安を抱えながらも、道路法と道路交通法を一から勉強し、数種類の書類を作成。商店街や秩父署、町役場に足しげく通いながら、黙々と署名を集めた。
「コロナ禍で客足が減ってしまった影響で、ここ最近は通行車両が特に目立っている。長瀞観光を回復させるためにも今、道路改善を行い、安全な観光を楽しんでもらうための環境づくりが必要」と、小林さんは一人一人に思いを伝えた。
小林さんの熱意に、商店街関係者たちも動いた。同意の壁となっていた「卸問屋の配達」は、業務に支障を来さぬよう、商店街付近に卸問屋専用の駐車場を用意。また、不利益を被る一部住民には「通行禁止道路通行許可証」を交付し、今まで通り生活道路として利用できるようにした。
数々の難題を解決し、28軒分の同意書を集めた小林さんは「父の代で実現できなかった交通規制が、今回、多くの協力者のおかげでかなえることができた。父に、良い報告ができる」としみじみ語る。
署名活動を陰で支えた長瀞区の井上喜昭区長(66)は「小林さんの地道な努力に尽きる。歩行者専用道路になったことを、観光客の方たちにご理解いただき、安全に楽しめる長瀞を商店街のメンバー全員でつくっていく」と話していた。