感動で涙しそうになった本部長、毎月寄付を福祉事業所へ 母思いで笑顔の障害者男性が教えてくれたこと
障害福祉サービス事業所「グリーンフィンガーズ」(さいたま市浦和区)を支援しようと、同市の男性が毎月、同事業所で作られる菓子5千円分を購入し、現金5千円を寄付している。昨年4月から始めて間もなく1年。きっかけは偶然の出会いだった。
寄付をしているのは、市内や独・フランクフルトなどですし店を運営している「ライズ」(同市大宮区)の統括本部長近藤隆広さん(40)。2020年10月ごろ、近藤さんは浦和区役所を友人と訪れた。窓口の前にある同事業所のピアショップ(自主製品販売所)に気付いて近づくと、恩田康平さん(21)が「お客さんが2人も来た。うれしいね」と笑顔で迎えてくれた。
飲食をなりわいとしてきた近藤さんにとって、恩田さんとの出会いは、「お客さんが来てくれたことの純粋な喜び」という商売の基本を改めて思い出させてくれたという。飲食業のコンサルティングも行っており、「お客さんへの向き合い方を教えている立場でありながら、彼から基本を教わった。感動して泣きそうになった」と振り返る。
「お返し」として、昨年4月から、パウンドケーキや人形焼き「ヌゥ焼き」など菓子5千円分を購入し、現金5千円を寄付している。恩田さんや事業所の施設長中島捷子さん(60)が毎月第1月曜日、同社に菓子を配達。近藤さんが1万円を手渡し、すし店の従業員らと一緒に食べる。従業員も楽しみにしているという。近藤さんは「原点を忘れないでいられるし、心の支えになっていることにも気付いた。毎月1万円を支払えるように頑張ろうと思う」と語る。
中島さんによると、恩田さんは各区役所のピアショップを回る同事業所の「看板販売員」。売り上げに貢献したとして表彰されたこともあり、受け取った賞金を母親に手渡している。近藤さんとのやりとりはあまり覚えていないというが、「販売は笑顔が大事だから」と人懐っこく笑った。
近藤さんと恩田さんのつながりから、新たな試みが検討されている。就労移行支援事業として、同事業所の利用者が、同社のすし店で、開店前の準備など就労体験する予定。同社の堺博社長から「企業は社会奉仕をしなければいけない」と了承を得た。近藤さんは「働ける喜びを見いだしてくれたらうれしい。うちの従業員も何かしら感じてくれればと思う」と期待している。
民間受け入れの就労体験は同事業所で初めて。中島さんは「大変ありがたい」と感謝し、「障害者の理解が進み、就労の道が広がればうれしい。利用者にチャンスをあげたい」と話していた。