埼玉新聞

 

<新型コロナ>患者ショックも…埼玉で後遺症外来の症例まとめ、6割男性40代最多 希死念慮ある重症例も

  • 後遺症診察についての講演を聴く医療関係者ら=25日、さいたま市大宮区

 県が昨年10月から取り組んできた新型コロナウイルスの後遺症外来の事例をまとめた症例集が完成し、担当した医師らによる講演会が25日夜、TKPガーデンシティPREMIUM大宮(さいたま市大宮区)で行われた。診療科ごとに医師が後遺症について紹介し、患者の話に耳を傾けたり、励ましたりすることの重要性を説いた。

 県は呼吸器内科、耳鼻咽喉科など7医療機関9診療科を後遺症外来に指定し、1月末ごろまでに集めた症例は422例。男性(261例)が約6割を占め、年代別では40代が24%で最も多かったが、幅広い年齢の患者が受診した。コロナ発症時期は356例が昨年7~9月と第5波が中心。県の後遺症外来への紹介制度は年度内で終了し、4月以降は後遺症外来に申し出ている県内129医療機関(3月25日時点)を患者が県のホームページなどで検索して受診する。

 講演会でさいたま赤十字病院の松島秀和医師は後遺症の呼吸器症状について「中にはコロナが軽症だった自宅療養者が後遺症外来でウイルス性肺炎と診断された例もあり注意が必要だが、多くは器質的異常(臓器や器官に現れる異常)は認められなかった」と説明。「後遺症外来では経過とともに改善する場合がほとんどであることを患者に説明し、再感染しないよう予防策について話すなどのアフターケアが重要」と指摘した。

 皮膚科の獨協医科大学埼玉医療センターの片桐一元医師は「後遺症に多い脱毛はほとんどが自然に回復するが、患者にとってはショックが大きいので、ウィッグを勧めたり、励ましたりすると良い」と説明。同様に耳鼻科の川越耳科学クリニックの坂田英明医師も「嗅覚障害により患者はストレスがたまるので、リハビリやカウンセリングなどで粘り強く経過観察する必要がある」と述べた。

 精神科の埼玉精神神経センター山下博栄医師は意欲低下や思考抑制などの症例を紹介し「希死念慮が認められる重症度が高い例もあった」と話し、診察時の傾聴や共感の姿勢とともに「職場などでの周囲の理解ある態度が治療上重要」と強調した。また、同センターは漢方薬の処方やはり治療を行った症例についても紹介した。

 県医師会の金井忠男会長は「今後不安を抱えた県民が訪れる後遺症外来を行う129医療機関で指針となる第5波までの症例集が出来上がった。デルタ株とオミクロン株では後遺症が違うと言われているので、全ての医師が不安なく後遺症診療ができるよう、第6波についての追補版を作ることも検討している」と話した。

 講演会は県と県医師会、ツムラ(東京都港区)が共催し、会場とオンラインで県内の医療関係者ら計383人が視聴した。

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