恐怖…大打撃でも苦しまないプーチン大統領 ロシア人女性、日本にいてもSNSに「反戦」投稿できない理由
ロシア軍によるウクライナ侵攻が続く中、20代のロシア人女性は「戦争はやめてほしい」と訴える。侵攻により多くの犠牲者が出ているほか、ロシア側も経済制裁で大きな打撃を受けているという。母国で暮らす家族や友人から窮状を聞き、「苦しむのは大統領ではなく、一般の人たち。怒りと絶望を感じている」と声を震わせる。
女性はロシア西部出身。村上春樹さんなど、日本の現代文学を日本語で読んでみたいと思い、日本語などを勉強して2019年に来日した。県内の大学に留学し、今月から日本で働いている。
離れて暮らしていても、母国にいる家族や友人とは電話で週に数回やりとりをしている。耳にするのは経済制裁と情報統制で混迷する母国の現状だ。
女性は友人から「日用品の値段が上がっている」と聞いた。都市部と地方では収入の格差もあり、このまま戦争が続けは、さらなる物価の上昇や失業者が増える懸念もあるという。「経済的に余裕ではない人はもっと苦しむだろう」と語る。
インターネット上では「なんで戦争に反対しないのか」などの声もあるが、ロシア国内では「恐怖で動けない」人もいるという。実際、ロシアのモスクワやサンクトペテルブルクで行われたデモでは、参加者の多くが警察に拘束された。
また、「母国が戦争をしていると信じられなくて、反対と言えない人もいる」と女性は語る。ロシア国内では軍の侵攻を「戦争」ではなく「特殊作戦」と伝えられており、それをうのみにしている人もいるという。
日本に暮らす女性やその周りの友人らも戦争には反対の立場。2月26日には、東京・新宿駅東口で行われたロシア人主体の反戦デモに参加した。ロシア国内に比べるとリスクは低いものの、安心はできない。
女性は、写真共有アプリ「インスタグラム」などの交流サイト(SNS)にデモの様子は掲載していない。うわさで「帰国する際、空港で職員に『SNSを見せて』と言われることもある」と聞いたからだ。パスポート更新のため、いつかロシアに帰国しなければならず、「そのときのために投稿は控えている」。
ロシアにいる家族や友人も心配だが、自身もロシア人に対する差別や偏見を気にしている。今のところ日本で嫌な思いをしたことはないが、今後の不安は隠せない。
侵攻が始まって1カ月余り。出口の見えない状況は続く。女性は「ロシア人の未来がどうなるかは誰にも分らない」とため息をついた。