世界が認めた職人の技 埼玉・飯能の鍛鉄家 加成幸男さん イタリアで行われた芸術祭で日本人初出場で金賞
2025/01/21/10:15
鉄を熱し、たたいて作品を生み出すロートアイアン(鍛鉄)。鉄の重厚な雰囲気や繊細な装飾美が魅力で、ヨーロッパでは門扉や家具に多く用いられる。飯能市川崎に工房を構える鍛鉄家の加成幸男さん(56)は、国外のコンクールを数々と受賞し、世界を魅了している。
工房の外に設置された真っ赤に燃えるコークス炉。加成さんが棒状の鉄を入れて熱し、先端部をハンマーでたたくと、力強く繊細な葉脈が再現された木の葉を生み出した。市内ショールームには花弁が一枚一枚表現されたバラや、菅笠(すげがさ)を深くかぶる侍などの作品から、フライパン、カトラリーなどの日用品まで、さまざまな鉄製品が並ぶ。
高校を卒業後、消防のレスキュー隊員になった。一方で、職人への憧れを胸に秘めていた加成さんは、22歳で鍛鉄作品に出合った。後の師匠となる秩父市の鍛鉄家の工房を訪れると、職人の世界に引きつけられた。「こんな夢の世界があるのか」。一から鍛鉄を学び、30歳で独立。作品のデザインや設計も手がけ、妻の庶子(ちかこ)さん(54)と共に作品を作り続けてきた。
2024年8月にイタリアで開催された芸術祭「サン・マルコアイアンフェスタ」では、制限時間3時間で、テーマの「ルーツ」から日本文化の源流を表現した竹と幣束を制作し、日本人初出場で金賞を受賞。加成さんは「勝つ自信しかなかった」と笑顔で振り返る。イタリアなどのヨーロッパでは鍛鉄が生活になじみ、複数人で一つの作品を制作することもある。「いつか日本で大きなものを作りたい」と夢を語った。