埼玉新聞

 

悔しい…ウクライナ侵攻直後、ロシア人留学生が内定取り消し 両親に言えず「でも日本を嫌いにならない」

  • 内定取り消し「悔しい」 蓮田のロシア人留学生

 日本語学校の東京日語学院(さいたま市中央区)に通うロシア人語学留学生で蓮田市に住む男性(33)は今春からさいたま市内のIT企業に就職する予定だったが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まった2月末、一方的に内定を取り消された。「政治家と一般のロシア人の考え方は全然違う。どうして?」。日本で憧れの仕事に就けると喜んでいた直後の出来事に悔しさをにじませた。

 内定取り消しの連絡があったのは2月28日。明確な理由は説明されなかったが、4日前に始まったロシア軍のウクライナ侵攻が絡んでいると推察した。内定先は1社のみ。ロシアで暮らす両親には言えなかった。「これ以上、心配をかけたくない。悔しい」と唇をかんだ。

 男性は母国の大学を卒業後、約8年間かけて学費と当面の生活費計約130万円の留学資金をため、2020年に来日。宅配のアルバイトをしながら、同校で勉学に励んだ。「日本人はみんな親切。アルバイト先の社員の人が日本の文化や歴史を面白く教えてくれる」。実際に訪れ、日本がますます好きになったという。

 同校によると、日本のアニメなどをきっかけに日本文化や自然に触れてみたいというロシア人学生も多い。男性と同じロシア人留学生で1月から2年生になった蕨市在住の男性(34)も語学留学を目的に来日。まだ進路を決めていないが、「日本の豊かな自然が好き。埼玉では(アニメの舞台となった)飯能や秩父などが気に入っている」とにこやかに話す。

 同校では3月、3人のロシア人が卒業した。このうち男性2人は就職活動中で、女性1人は日本人と結婚した。卒業式で荒木幹光学院長は複雑化する国際情勢に触れ、「日本を好きになってほしい。コロナ禍でよく勉強した」と卒業生を褒めたたえた。

 蓮田市の男性はもう1年、学校に残り、志望するIT業界への就職を目指すことにした。進路について報告を受けた同校は「次の就職が決まるまで学生として在留してもらい、就活を続けるよう指導をしていく」と話す。

 内定取り消しにはショックを受けたが、「それで日本を嫌いになることはない」と語る男性は「一般のロシア人に対する偏ったイメージをなくして、正しく理解してほしい」と訴えた。

■ウクライナ避難民に無償の日本語教育

 荒木学院長が理事長を務める全国日本語学校連合会(東京)では、ウクライナからの避難民に無償で日本語教育を行う方針を明らかにしている。荒木学院長は「日本で暮らしていく上で日本語を正しく理解することが安心安全な生活につながる。難民の方の心に寄り添い、積極的に日本語教育を行っていきたい」と話している。

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