トランプ大統領就任に埼玉・財界も注目 政策次第で経済界へ影響…経営戦略の一部転換も 輸出関連企業などから不安や懸念の声 「当面は様子見を徹底」「物価や仕入れ価格高騰に」「原油増産が進めば」
ドナルド・トランプ氏が、米大統領に返り咲いた。就任直後から関税引き上げの検討、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」の再離脱、前政権が進めた多様性・公平性・包括性(DEI)政策の否定―。「トランプ劇場」の復活による大転換に、日本国内からも不安や懸念の声が上がった。
トランプ大統領は、2月1日から隣国のカナダやメキシコからの輸入品に25%の関税を課すことを検討していると明かした。「自国第一主義」を掲げる経済政策に、輸出関連企業を含めた埼玉県内財界からも注目が集まっている。
中国などに生産拠点を持つ粉末冶金(やきん)製品の「ポーライト」(伊奈町)は、自動車や家電のモーター部品などをアジアや北米など世界各国に供給。米国ミズーリ州に販売拠点も有する。菊池正史社長は「昨年の米大統領選前からメキシコに新たな製造拠点の進出を目指して複数の候補地を当たってきたが、今後4年間はペンディング(保留)するしかない」と経営戦略を一部転換する方針。中国やインドの現地法人はそれぞれの国で内需がある程度見込まれるとし、「当面影響はない」と話した。
県内には、寄居町のホンダ四輪車完成工場など自動車関連企業も多いことから、今後のトランプ政権の政策次第で経済界への影響も懸念される。県商工会議所連合会の池田一義会長は「米国進出企業にとってはプラスの側面があるかもしれないので、一連の報道に一喜一憂せず当面は様子見に徹底すべき」と冷静な対応を強調した。
武蔵野銀行の長堀和正頭取は「通商政策の強硬化は超円安を再び招き、経済の持続的成長の足かせとなる物価や仕入れ価格高騰につながりかねない。今後もスピード感のある企業支援に努めたい」と意欲を示した。
りそなアセットマネジメントの黒瀬浩一チーフ・ストラテジストは「トランプ大統領は外交や経済で米国第一政策を掲げており、関税の引き上げだけでなく、防衛費の増額要求も日本の大きな負担になる」と指摘。一方、中東や東欧の戦争終結など、トランプ政権の“力による平和”外交で原油増産が進めば、「インフレを抑制し生活コスト引き下げにもつながるのでは」と期待を寄せた。