命奪われた妻子3人に「かける言葉ない」 熊谷6人殺害で国賠訴訟が棄却 遺族の男性「ただただ悔しい」
「亡くなった3人に本当にごめんとしか、かける言葉が見つからない」―。熊谷市で2015年に男女6人が殺害された事件で、県警が情報提供を怠ったために妻子3人を殺害されたとして、遺族が県(県警)に約6400万円の支払いを求めた国家賠償請求訴訟。原告の加藤裕希さん(49)は判決後に記者会見し、怒りや無念の気持ちを明かした。
判決を前に報道機関に対して初めて実名を公表した加藤さん。怒りで判決を途中までしか読めなかったと言い、「亡くなった3人に対して何をやってきたのかなという気分に陥った。刑事裁判もそうだが、司法の考え方に憤りしか感じていない」と率直な心境を吐露した。「小さい娘たちに『パパ本当に頑張ったよね』と言われるように頑張らなきゃいけないが、まだ答えが見つからない」と肩を落とした。
証人尋問では当時の県警刑事部長、捜査1課長、熊谷署長らが捜査状況を証言した。加藤さんは「責任を負う立場のある警察官が本当に適切に判断したのか。責任を持っている人が1人もいなかった。ただただ悔しい気持ち」と改めて疑問を投げかける。
提訴に踏み切った理由は、「3人に対して心から謝ってもらいたかった」ことと、「家族の命が奪われるまでの経緯、真実を知りたかった」ことだった。しかし、欲しかった答えが得られず、「こういう結果になって悲しいというより怒りしかない。亡くなった3人に本当にごめんとしかかける言葉が見つからない」と嘆いた。
最後には「気持ちを切り替えて、またひと踏ん張りやっていきたい」と弁護士と相談して控訴する意向を示した。
代理人の高橋正人弁護士は、「判決はスタートラインから法律の解釈が間違っている」と指摘。原告側は過去の判例などから、警察法や警察官職務執行法に基づき、県警には周辺に対する情報提供の義務があったと主張していたが、判決では「特定の個人に対する個別の法的義務」という前提で全ての争点を判断した。高橋弁護士は「今までこんな判例はない。判決は(対象を)加藤さん宅に限定しているのが間違いの全て」と批判した。