埼玉新聞

 

さらなる遅れ許されない…順天堂大の新病院、開院を27年に早める 医師不足地域への医師派遣、年度内に

  • 順天堂大学医学部付属病院の整備予定地=さいたま市緑区

 県がさいたま市美園地区に誘致を進める順天堂大学医学部付属病院の整備計画を巡り、順大側が全800床を備えた開院時期をこれまでの2030年から27年に早めた上、本年度中に県内の医師不足地域へ医師を派遣すると、県に回答したことが19日の県医療審議会(金井忠男会長)で明らかになった。同審議会は今後も大学側に月に1回程度の報告を求めるとしつつ、大筋で計画を承認し、県に整備計画の答申を行うことを決めた。

 会議後、県医師会の会長でもある金井会長は報道陣の取材に対し、当初2021年開院とされていた計画が大幅に遅れた経緯に触れ「長時間(計画が)遅れてしまい、信頼できないところもある」と指摘。今回の順大側の回答でも県地域医療構想が想定する25年には間に合わないことから、「さらなる遅れは許されない。間違いなく実施することを確約してもらわなければならない」と話し、今後も進捗(しんちょく)状況の報告を順大側に求めるとした。

 また、金井会長は早期の医師派遣実現に向け、医師確保が困難な県北、秩父、利根地域の需要を調整し、順大側に伝えるための委員会を今月中にも立ち上げる考えを示した。県の確認では、これまで県北、秩父、利根地域を含む医師不足地域の5病院から80人弱の医師派遣の要望があったという。金井会長は「優先順位がある」として本年度中に順大側に派遣を求める人数については明言を避け、「県内の医療というものを順大だけに頼るわけではない」と話した。

 美園地区での新病院は18年までの着工を条件に公募され、順大の計画が採択されたが、新型コロナウイルス感染拡大などの影響で大幅に遅れていた。昨年12月には29年に400床、30年に全800床を備えて開院するとの計画変更が県に提出されたが、さいたま市地域医療構想調整会議で地元医療機関から不満が噴出。今年1月の県医療審で見直しを求められていた。

 順大側は2月、開院時期について400床を27年9月、全800床を28年9月までとする回答を県に提出したが、医師派遣については「開院し、運営状況の安定が得られた上で実行」などとしていた。回答に対し、県が再び22年度中の医師派遣を求めた。それに対し順大側の回答は「22年度は派遣計画具体化のため県と協議を進め、医師派遣が可能な時期、規模の検討を進める」と明確な時期は示さなかった。

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