埼玉新聞

 

世界に一つだけ…カスタムIEM、一人一人の耳にフィット 所沢のメーカー、耳型から完全手作り ライブ中にミュージシャンが使用…遮音性や音質、国内外の音楽関係者やオーディオファンから評価

  • カナルワークスの作業場に立つ林一博代表取締役

    カナルワークスの作業場に立つ林一博代表取締役=所沢市東所沢

  • カナルワークスの作業場に立つ林一博代表取締役

 ミュージシャンがライブ中に使用するイヤホン「インイヤーモニター(IEM)」を、カスタムで製造する「カナルワークス」(埼玉県所沢市)。耳型から作ることによる遮音性やこだわりの音質、自分で選べるデザインが、国内外の音楽関係者や一般のオーディオファンから評価される。代表の林一博さん(65)は、「カスタムはお客さまと一対一で作る商品。一人一人に満足していただくことを一番大事にしてきた」と語る。

 カスタムIEMは提携店で採取した耳型を基に作るオーダーメイド商品。本体部分の「シェル」を26色から選び、さまざまな装飾を選択することで、世界に一つだけのものを手に入れられる。ウェブサイトで製品イメージを確認しながら注文可能。音質にこだわり、通常一つ入れるスピーカーを最大8個組み込み、ジャンルに合わせた音を奏でる。

 製造は従業員5人の手作業。耳型から作ったシェルの形に合わせ、細かな機器を組み込み、プレートでふたをして注文通りにデザインする。仕上げに滑らかに磨き上げ、さらに気泡や傷の検査を繰り返す。林さんは「時間はかかるが、耳型が届くということは、お客さんが見えるということ。お客さんと一対一で作る商品」と力説する。

 林さんは大学卒業後、大手オーディオメーカーにエンジニアとして約30年勤務。「新しいことに挑戦したい」と注目したのがIEM。当時、音楽は据え置きのステレオで聴くものから、オーディオプレーヤーで持ち歩くものに変わりつつあった。ライブ会場ではスピーカーを床に置いて使用していたが、音が遅れて聞こえるなどの難点があり、遮音性に優れたIEMがアメリカで使われ始めていた。

 耳型から作ることで一人一人の耳にフィット。遮音性が高く、臨場感ある音楽体験ができる「没入感」が特徴。装着性に優れ、イヤホンが耳から落ちることもなくなるという。林さんは「今も国内の製造会社は数社。カスタムデザインまでやっているのはうちだけ」と胸を張る。

 一方で一般の顧客への認知度不足が課題。「意見をもらい、商品を磨き上げられるのもうちの強み。多くのお客さまに使ってもらえるよう、努力を続けたい」と語った。

 カナルワークス 所沢市東所沢1―4―1ヤマザキビル301▽電話04・2941・4852

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