埼玉新聞

 

日々懸命に…「不動心」の境地で世界一 東京五輪・柔道女子の金メダリスト、寄居署で講演 署員ら姿勢に感心「心の部分からたくさん学べた」

  • 講演する新井千鶴さん

    講演する新井千鶴さん=1月28日、寄居署

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 埼玉県の寄居署(杉山勝信署長)は1月28日、2021年に行われた東京五輪の柔道女子70キロ級金メダリストで、寄居町出身の新井千鶴さん(31)を講師に招き、講演会を開催した。新井さんは、五輪後の同年9月に現役を引退。三井住友海上火災保険の女子柔道部でアドバイザーを務めている。

 新井さんは「東京五輪金メダルへの道のり」と題して、逆境を何度も乗り越えながら歩んできた競技人生を語った。町立男衾小学校1年生だった7歳の頃、柔道を本格的に始めた新井さんは、町立男衾中学校を経て県立児玉高校へ進学すると、3年生の時に出場した高校総体女子70キロ級で優勝。卒業後の12年に三井住友海上火災保険へ入り、世界を目指すことになった。

 高校総体を制するまで大きな実績がなかった新井さんは、入社1年目にレベルの差を痛感。だが、2年目にグランドスラム東京大会でタイトルをつかんだ後は、逆に「勝てなかったらどうしよう」と重圧に苦しむようになった。照準を合わせていた大会の序盤で敗れるなど、安定して好成績を残せなくなり、16年のリオデジャネイロ五輪の代表選考で落選。「私も現地に行ったが、とても悔しかった。でも、結果を恐れず臨もうと吹っ切れた」と振り返る。

 17、18年の世界選手権を連覇し、日本の第一人者となったものの、自分を追い込みすぎて心と体のバランスを崩し、一時期休養。競技に復帰して迎えた20年のグランドスラム・デュッセルドルフ大会で優勝して東京五輪の代表に内定したが、今度は新型コロナウイルス感染拡大で初の晴れ舞台は1年延期された。

 それでも、経験を重ねた新井さんは「どんなことにも動じず、自分のやるべきことをやろうと思えた」と、「不動心」の境地にたどり着いたという。「コントロールできないことにとらわれず、日々懸命に生きようとする気持ちになれたから、金メダルが取れた」と自己分析する。

 会場では署員ら約60人が、新井さんの話に耳を傾けた。細川礼奈巡査部長は、「経験を未来に生かそうとする姿勢が印象的だった」と感心。荒勇人巡査(28)は「金メダリストの心の部分から、たくさん学べた。私たちの仕事にも役立てたい」と話した。

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