埼玉新聞

 

女子高生が殺害された事件…再審求める活動加速 「被害者の万年筆ではない」弁護団、新たな証拠も

  • 署名を提出した鎌田慧さん(右)ら(狭山事件の再審を求める市民の会提供)

    署名を提出した鎌田慧さん(右)ら(狭山事件の再審を求める市民の会提供)

  • 署名を提出した鎌田慧さん(右)ら(狭山事件の再審を求める市民の会提供)

 埼玉県狭山市で1963年に女子高校生が殺害された「狭山事件」で、無期懲役となり服役後に仮釈放された石川一雄さん(86)を支援する「狭山事件の再審を求める市民の会」は5日、第3次再審請求に関連した鑑定人の証人尋問などを要請するため、東京高裁に約2万筆の署名を提出した。再審制度の改正を巡っては国会でも議論が進んでおり、石川さんの支援者らは活動を加速している。

■50万筆超の署名

 昨年10月、静岡一家4人殺害事件で、袴田巌さん(88)の再審無罪が確定している。袴田さんの再審審理では鑑定人の証人尋問が行われており、石川さんの弁護団などは「誤判から救済する鍵となった」と必要性を強調し、「これまで一度も証人尋問が行われていないのは、公正公平な裁判とはいえない」と批判した。

 要請を行った同会の事務局長を務めるルポライターの鎌田慧さんは「石川さんが86歳という高齢であることも踏まえ、なるべく早く鑑定人の尋問を始めて再審を開始してほしい」と訴えた。今回のものを合わせて、署名は合計54万965筆に上った。

■インク成分で新証拠

 狭山事件の弁護団は2度にわたって再審を訴え、いずれも棄却された。2006年に申し立てた第3次再審請求で、裁判所、検察側、弁護団の間で行われる三者協議は今年1月14日で63回を数えた。

 昨年10月には、事件後に石川さんの自宅から発見された被害者のものとされる万年筆について、被害者が事件当日に書いたペン習字とインク成分を比較するための蛍光エックス線分析を実施。別の装置による18年の鑑定と同様に、成分が異なっていたことが判明したという。

 弁護団は「発見された万年筆は被害者の使っていた万年筆ではない」という主張の裏付けになったとして、12月末に新証拠として東京高裁に提出した。

■再審制度見直しの動き

 袴田さんの再審無罪を契機に、再審制度を見直す機運が高まっている。現行制度に対しては、証拠開示の在り方が課題と指摘された。石川さんの弁護団は、再審決定に時間がかかる要因として、証拠を積極的に開示してこなかった検察側の姿勢を挙げている。

 再審制度を巡っては、鈴木馨祐法相が今月7日、制度の見直しを法制審議会に諮問する方針を表明。超党派の議員連盟も、今国会中に制度の改正案を議員立法で提出するとしている。

 市民団体は11日午後1時半から、さいたま市浦和区のさいたま共済会館で、再審制度改正に関する意見書の採択を県議会に要請する県民集会を開く。事務局員で集会運営の赤嶺菊江さんは「全国では多くの地方議会で意見採択されている。県議会でも採択してもらい、各市町村に波及するように呼びかけたい」とした。

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