埼玉新聞

 

実験で高齢者の2割が不合格…運転技術を確かめる検査導入 改正道交法13日施行「運転見直すきっかけに」

  • 高齢者の運転免許更新時に実施される講習の様子(県警提供)

 改正道路交通法が13日施行され、75歳以上の高齢者で過去3年間に違反行為のあった運転手が運転免許を更新する際、新たに運転技術を確かめる実車検査(実車試験)が導入される。認知機能などの思考、判断力の適正を検査してきた従来の制度に加えて、身体的な適正も確認することで高齢者による交通事故を減少させるのが狙い。県警が2020年に実施した実証実験では、試験を受けた高齢者の2割が不合格となっており、担当者は「運転を見直すきっかけにしてほしい」と呼びかけている。

 県警交通総務課によると、昨年に県内で発生した70歳以上の運転手による死亡事故は20件。17年~21年の5年間では計98件発生していた。

 事故の原因となった違反事項を70歳未満の死亡事故と比較すると、ハンドルブレーキ操作不適は、70歳以上が98件中27件(約27%)、70歳未満が514件中26件(約5%)。一時不停止は、70歳以上が98件中11件(約11%)、70歳未満が514件中23件(約4%)と、それぞれ70歳以上の運転手の割合が約5倍、約3倍に上った。

 高齢者の運転免許更新について、これまでは70歳以上の高齢運転手には座学の講義や運転適性検査などの高齢者講習が求められ、75歳以上は講習前に記憶力や判断力を測定する認知機能検査を受ける必要があった。しかし高齢者による事故の割合が他年代よりも高いことを背景に、これまでの検査とは別に身体的な適正をみる試験が導入される。

 対象は、75歳以上で過去3年間で通行区分違反や前方不注意など11の違反行為をした運転手。一時停止や右左折、指示速度、段差乗り上げなどの項目を確認する実車による試験を設け、合格できなかった場合は更新ができなくなり失効する。更新期限満了日までであれば何度でも受けられる。

 県警が20年に運転免許センター(鴻巣市)で実施した実証実験では、試験を受けた77人のうち、約20・7%に当たる16人が不合格となった。運転免許課によると、22年度で運転技能検査の対象になる運転手は約4千人に上るという。

 同課の本多一美次席は「高齢運転者の死亡事故はハンドル操作の誤りなどに起因する割合が多い」と分析。「実車検査を通して加齢に伴う身体機能の低下を再認識し、運転を見直すきっかけにしてほしい」と呼びかけている。

 高齢者の運転免許更新については、運転手の増加などを要因に講習業務が逼迫(ひっぱく)している。講習は免許更新満了日の6カ月前から運転免許センターや自動車教習所などで受けることができるが、昨年12月の時点で受講できるまでの待機期間は67日に上った。

 県警は24年度内にも、さいたま市岩槻区内で全国初となる高齢者講習専用施設の運用を始める。今回の改正道路交通法によって新たに設けられた運転技能検査についても同所で行うことができる。

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