埼玉新聞

 

取り乱した父娘、詐欺犯にカードを渡そうとしたが…納車手続きに訪れたホンダカーズ社員が声かけ 被害防ぐ

  • 熊谷署の桑島正彦署長(左)から感謝状を受け取る長井一郎さん=12日、熊谷署

 新車の軽自動車納車手続きのために訪れた顧客の自宅で特殊詐欺事件に遭遇し、警察に通報して被害を未然防止したとして、熊谷署は12日、熊谷市広瀬の自動車販売会社ホンダカーズ埼玉北熊谷広瀬店販売課係長の長井一郎さん(35)に感謝状を贈呈した。

 同署によると、4月24日午後0時半ごろ、熊谷市の90代男性と50代長女が住む住宅に、警察官を名乗って「あなたのキャッシュカードが使われ、お金が下ろされている」「キャッシュカードを封筒に入れて預けてくれればお金が戻ってくる」などと電話があった。

 話を信じた2人が自宅で警察官を名乗る会社員男(20)にキャッシュカードを渡そうとしたところに、長井さんが訪問。会話の内容を不審に思い、男に声をかけると逃げられた。長井さんは110番し、男の身長や服装などの特徴を説明した。署員が秩父鉄道上熊谷駅で男を発見し、詐欺未遂容疑で逮捕した。

 長井さんが訪問した際、長女は取り乱した様子で、納車の延期を提案するほど。男はジャケット姿で1人でいて、警察手帳を持っていなかった。「キャッシュカード」という言葉も聞こえたため、不審に思って声をかけたという。

 同署の桑島正彦署長から感謝状を受け取った長井さんは「こんなに話が大きくなるとは思わず驚いている。無事に納車ができて良かったが、今後も今まで通りの仕事をして、できる限り協力したい」と語った。桑島署長は「一歩踏み出したかつ冷静な対応で非常に感謝したい」と話した。

 同署によると、管内の特殊詐欺被害は昨年が4件で893万円だったが、今年はすでに7件で約2800万円の被害が発生しているという。

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