けいれん女児、意識不明に…バスケ試合中 観戦中の看護師が処置、コーチや保護者も 息吹き返し、流れた涙
バスケットボールの試合中に倒れた女子児童の救助に貢献したとして埼玉西部消防局は17日、所沢市在住の看護師青木紀江さん(45)ら5人に感謝状を贈呈した。感謝状を受けたのは、青木さんのほか、溝尻ちよのさん(50)、後藤崇志さん(49)、海老沼慶之さん(48)、浜田里香さん(47)=いずれも市内在住=の合計5人。とっさの判断と連携プレーで女児の命を救った。
青木さんらによると、女児(当時12歳)が倒れたのは、2月6日の正午ごろ、所沢市民体育館で行われた地元女子小学生ミニバスケットチームの練習試合中のことだった。救命活動に当たった5人のうち、後藤さんと海老沼さんはそれぞれ同チームのコーチで、浜田さんはチーム所属児童の保護者。青木さんと溝尻さんは同時刻に隣のコートで行われていた別の試合を観戦していた。
女児が倒れた際、すかさず自動体外式除細動器(AED)を取りに走ったのは後藤さん。「自身も心臓病手術を受けた経験があったため、利用施設のAED設置場所を気にしていた」と話す。AEDが届くまでの間、浜田さんは119番通報、海老沼さんは本業である理学療法士の経験を生かし、けいれんする女児の意識の確認などに当たった。
操作そのものは簡単とされるAEDだが、後藤さんらはためらった。「児童は女子。AEDのパッドは胸に直接付ける必要がある。はたしてこの場で使用するべきか」。その時、AEDの発する音で隣のコートの異変に気付いたのが、溝尻さんと青木さん。看護師であることから、児童のもとに駆け付けた青木さんは「この場で処置しましょう」と言った。
電気ショックが必要だった。「勤務先の研修でAEDを操作したことはあるが、実際に救護活動で使用したのは初めて。ボタンを押すのに勇気が必要だった」と青木さんは振り返る。1度目の電気ショックでは女児の意識は戻らなかった。次の電気ショックまでの2分間、溝尻さんが胸骨圧迫を、青木さんが人工呼吸を行った。
「まぶたが動いている」。2度目の電気ショックの後、5人は女児が息を吹き返したことに気が付いた。女児の目からは涙が流れていた。その後、現場に到着した救急隊から「応急処置が迅速だったため女児は助かった」と言われれて緊張の糸が切れたと5人。贈呈式で岸文隆消防局長は「勇気ある行動で尊い命が救われた。管内では毎日8件以上救急出動が行われている。現場の人の応急処置が救命への第一歩だ」と語った。
心停止後、1分経過するごとに救命率は7~10%低下するとされている。AEDを含め、いかに迅速に救護に当たるかが、救命につながるか否かの分水嶺だ。
過度な運動は控えるよう言われているが、女児の健康状態は良好。中学生になった現在は「早くみんなとバスケがしたい」と話しているという。