開業10年のJR吉川美南駅、周辺の人口1万人に到達 駅前にイオン、小中学校も開校 東口側の開発も期待
吉川市内の2番目の駅として誕生したJR武蔵野線吉川美南駅が開業10周年を迎えた。地元住民や自治体、企業などからの要望により建設された請願駅で、吉川駅と新三郷駅間にあった旧操車場跡地にある。2012年3月の開業とともに同駅を核としたまちづくりが進められ、駅西口周辺に整備された住宅の居住者は約1万人に達し、市の人口増の大きな要因となった。駅東口では、17年から計画人口を約4500人とする区画整理事業が進み、文化芸術拠点となる市の新たな顔として発展が期待されている。
同駅は、旧武蔵野操車場跡地周辺で展開された大規模な区画整理事業の一環として誕生した。当時、居住者の増加や商業機能の集積による鉄道利用者の増加が見込まれていたほか市などからの要望もあり、07年からJR東日本と同市で新駅設置に向け協議を開始。09年から建設工事に着手し、12年に開業を迎えた。
開業時、記念切符を入手するため前日から徹夜で並んだ小澤裕心さん(46)は、「駅反対口に並んだ鉄道マニアの人が一番乗りを主張したが、JRや市の判断で1番を入手することができた」と懐かしそうに振り返った。
■西口開発で人口転入
駅開業とともに西口では住宅や商業施設の開発が進められ、駅前にイオンタウン吉川美南店がオープンし、小中学校も開校した。開業当初、6万8060人だった市の人口は、22年3月1日現在で7万3099人に増加。市吉川美南駅周辺地域整備課は「同区域への転入者が市全体の人口増に大きく寄与した」と駅開業に伴う新たなまちづくりの効果を裏付ける。
東日本大震災で被災し福島県から移住した金田桂子さん(47)は「ゼロから開発したまちだったので、地縁のない私たちでも受け入れてもらえた」と話す。6年前に転居した松倉歩未さん(34)は「スーパーや保育園、病院など生活に必要な施設が駅周辺に集約され、自然豊かで公園も多く子育てしやすい環境だ」と利便性の高さを強調した。
■東口は文化芸術拠点に
一方、田園地帯だった駅東口周辺は現在、約60ヘクタールのエリアに住宅や産業、商業施設を整備する土地区画整理事業が進められている。産業ゾーンには、ハウスメーカーや検定機関など施設見学が可能な事業者が入居し、市民との交流や地域貢献が期待されているほか、駅前の商業・業務ゾーンでは劇場など文化関連施設を整備する計画だ。同市が総合政策の柱に掲げる文化芸術の拠点としてまちづくりを展開する方針だという。
創業180年超の歴史がある料亭「福寿家」の小林政夫社長(74)は「若い世帯が多く移住しまちに活気が生まれている。駅東口の新たな開発に伴う企業誘致等により、雇用創出や地域経済の活性化にもつながるのでは」と今後の発展に期待を寄せた。