男性焼死…焦げたスマホ発見、怨恨の可能性 動けなくさせた犯人、生きたまま火付け、施錠し立ち去ったか
朝霞市の放火殺人事件は捜査本部設置から1週間となった。県警は、現場や周辺の聞き込み、付近の防犯カメラ、ドライブレコーダーの映像を集めるなどして逃走した犯人の行方を追っている。ただ、有力な手掛かりに乏しく不審な人物は浮上していない。建物内部の燃え方が激しく、現場検証に時間を要するのも捜査が難航している大きな要因だ。
火災は14日午前9時50分ごろ、通行人からの119番で発覚した。プレハブ平屋「長葭(ながよし)内装」の事務所兼作業場が全焼し、焼け跡から遺体が見つかった。その後のDNA型鑑定で身元は同社社長の男性(43)と判明。県警は建物にガスが通っておらず、普段は火の出ない場所から出火している点に加えて、司法解剖の結果、死因は焼死で、男性の血中から一酸化炭素が検出されたことから生前に火が付けられたとして、放火殺人と断定した。
男性が倒れていたのは建物南側の事務所で、北側の作業場スペースでは血痕が見つかった。燃え方は事務所側の方が激しいが、出火場所や出火原因も特定には至っていない。作業場からは男性のものとみられるスマートフォンも見つかったものの、焼け焦げた上に水をかぶっていて解析できるかは不透明だ。
男性の上半身には複数の骨折痕があり犯人は何らかの凶器で殴るなどの暴行を加えたとみられる。消防が突入する際に建物の出入り口は施錠され、作業場のシャッターは下りていた。シャッターは内側のボタンで操作するため男性が動けなくなったところに火を放ち、出入り口を施錠してから立ち去った可能性が高い。鍵はまだ発見されてない。現金3万円の入った財布は男性が仕事で使った車の中から見つかった。
男性は一人親方で仕事仲間の仕事を手伝ったり、手伝ってもらったりしていた。同業者からは「優しくて事件に巻き込まれる人ではない」という声も聞こえてくる。県警は物取りよりも怨恨(えんこん)の線が強いとみているが、現時点で事件に直結しそうなトラブルは確認されていないという。
県警は、引き続き男性の交友関係を当たるなど、犯人の特定とともに殺害された経緯などを調べている。