移転して済生会加須病院が開院、跡地に秋谷病院が入る予定も時期未定 近所の患者、移転先まで片道1時間に
済生会栗橋病院(久喜市小右衛門)が隣の加須市に移転し、済生会加須病院が1日、開院した。栗橋病院跡地には、幸手市中の秋谷病院(二次救急指定)が入る予定だが、具体的な時期は決まっていない。地域の中核病院が移転し、加須病院に通院することになった利用者からは「不便になる」との声も。地元経済にも影響を及ぼし、久喜市は栗橋病院跡地の利用などに関し秋谷病院と協議を進める。
「近くだったので長年利用してきた。主治医がいるので、これからは加須まで通う予定」。栗橋病院に通院していた久喜市内に住む60代女性は寂しそうに語った。
30年以上、利用している地元の70代男性は「本当に残念。不便になる」と肩を落とす。車の運転が得意ではないため電車で通院するつもりだが、栗橋病院近くの東武日光線南栗橋駅から加須病院の最寄りの東武伊勢崎線加須駅までは東武線かJRを乗り継ぐ必要があり、片道1時間かかるという。
移転は地域経済にも暗い陰を落とす。5月31日、機材の搬出などでトラックが出入りする栗橋病院玄関口。タクシーの男性運転手がロータリーに車を横付け、感慨深そうに病院の建物を眺めた。これまで帰宅する利用者を乗せる機会が多かったといい、「誰かいるかと思ったけど。明日から商売上がったり」とぼやいた。
付近に点在する薬局は加須病院近くに移転する店がある一方、店舗の一部を残す薬局もある。「良い土地が見つからなかった」と加須への出店を諦めた薬局は今後、営業時間を短縮するという。受付の女性は「秋谷病院が来るというので店は続けます。ただ、情報が少なくて」。
地元住民は、栗橋病院敷地内の銀行ATMを頻繁に利用していた。管理する埼玉りそな銀行栗橋支店によると、ATMは名称を変更し、そのまま残すという。
栗橋病院跡地に入る予定の秋谷病院は現在の建物が古く、場所によっては築50年が経過しているという。老朽化を理由に栗橋病院跡地に全面移転し、幸手市の施設は閉院する見込み。秋谷病院は「手続きや準備があり、具体的な移転の時期については未定。ただ地域の方のためにもできるだけ速やかに移転したい」としている。
久喜市が済生会に無償譲渡していた栗橋病院の土地は移転に伴い返還され、市は秋谷病院と契約に関する協議を進める方針。土地の価格を鑑定するため、6日に始まる市議会に関連予算を提案する。梅田修一市長は5月30日の定例会見で「地域医療の空白期間はなるべく短くしたい」と話した。