10~20代の親が8割 当事者家族の相談急増 家族や知人から借金→人間関係壊すだけでなく、闇バイトなど犯罪に巻き込まれる恐れも/ギャンブル依存の今(下)
身内のギャンブル依存に苦しむ家族らが連携して互いの問題解決を図るNPO法人「全国ギャンブル依存症家族の会」。全国42都道府県で活動しており、県内では2019年9月に計17人の家族らでスタートした。同会は毎月1回定例会を開催し、元当事者らの支援団体や行政、医療機関、司法当局と連携し、ピアサポート(助け合い)に取り組んでいる。
■低年齢化に懸念
2月16日にさいたま市大宮区で開かれた会合には、県内外から約100人の家族らが参加。グループに分かれて、参加者はそれぞれの悩みを打ち明けた。
18歳への成年年齢引き下げが22年4月から実施されたことに伴い、依存症の低年齢化など新たな課題も出ている。アルコールや薬物など各種依存症の予防教育を行っている家族の会埼玉の長岡陽子さんは「スマートフォンの普及でギャンブルの機会が増え、実態がますます見えにくくなっている」と警鐘を鳴らす。
米大リーグ・ロサンゼルスドジャース大谷翔平選手の口座から巨額の現金を盗み取った元通訳の水原一平被告の詐欺事件が24年3月に明らかになった。発覚以降に、同会への相談が急増。24年4~8月に行った参加者アンケートでは、10~20代の子どもを持つ参加者が約8割に上るなどギャンブル開始の低年齢化が加速している可能性があるという。
同会によると、若者は銀行や消費者金融で大きな額を借りることができず、家族や友人知人から借金するケースがほとんど。その後の人間関係を壊すだけではなく、近年はオンラインゲームの多重課金やチャット機能を使った闇バイトの勧誘で新たな犯罪に巻き込まれる恐れもある。長岡さんは悪質なインターネット広告の規制など早期の法整備を求めた。
職場での横領や窃盗の背景にはギャンブル依存症が隠れている場合が多いとも。息子の借金が原因で4年前に家族会とつながったという女性スタッフは「病気という認識が企業側に全くなく、善意で借金を肩代わりしてくれる社長さんには申し訳ないが、それでは本人の回復が遠のくだけ」と話す。当事者にとっては「いい金づるができた」くらいの感覚しかないという。
■回復を信じる
都内の大手上場企業に勤める20代男性は、この日初めて会合に参加。友人4人から約80万円の借金があるとカミングアウトした。年収は1千万円超えで、はたからは何の不自由もない生活に見えるが、「現金が入るとどうしても競馬に使ってしまう」と苦しい胸中を明かした。それでもサポートスタッフらが「病気を治したいと思って、きょうここに来てくれたことが大きな第一歩。また次回も参加してほしい」と話すと、前向きにうなずいた。
家族の会では依存症患者に向き合う大前提として、(1)病気であると理解し必ず回復すると信じる(2)金銭管理は本人にさせる(肩代わりしない)(3)説得しない(4)人格を否定しない―などを心得としている。
今月9日にさいたま市文化センター、4月13日に所沢市民文化センターで同会の情報交換会が開催される。
【ギャンブル依存の家族支援 主な相談窓口】
◇NPO法人全国ギャンブル依存症家族の会埼玉(電話090・6133・5183)
◇一般社団法人ギャマノン日本サービスオフィス(電話03・6659・4879、毎週月、木曜午前10時~正午)