甲武信ケ岳、周辺地域を「エコパーク」登録へ ユネスコの諮問委員会が勧告 秩父や小鹿野から喜びの声
文部科学省は17日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問委員会が埼玉、東京、山梨、長野の4都県にまたがる日本百名山の一つ甲武信ケ岳(こぶしがたけ)(2475メートル)周辺地域を生物圏保存地域「エコパーク」に登録するよう勧告したと発表した。勧告は尊重されるのが通例で、6月17~21日にパリで開かれる国際会合で登録が正式決定する見通し。勧告通り登録されれば、国内のエコパークは計10地域となる。
登録対象となる秩父市や小鹿野町の地元関係者からは「非常にうれしい」などと喜びの声が聞かれた。
秩父市の久喜邦康市長は「甲武信源流サミットなどをはじめとする関係する皆さまの活動の成果や市民の皆さまに長年培われた『自然とともに生きる』という日頃の生活が評価されたものと、非常にうれしく思っている」とコメントした。
小鹿野町の森真太郎町長も「非常にうれしい。荒川の水源地で、豊かな自然を守ることにつながる」と喜ぶ。町はクライミングによるまちおこしを推進し、町内の旧県山西省友好記念館「神怡(しんい)館」をボルダリング施設へ改修する計画も進める。
甲武信ケ岳の山頂付近にある山小屋「甲武信小屋」を営む山中徳治さん(69)は旧大滝村(現秩父市)出身で、30年以上にわたって甲武信小屋に携わってきた。山中さんは「去年はお客さんの数も少なかった。山小屋の運営はある程度のお客さんが必要なので、今年は増えてくれれば」と期待していた。
■大変うれしく思う/上田清司知事の話
日本百名山にも数えられ、本県を代表する名峰である甲武信ケ岳や雲取山を含む「甲武信」が国際的な見地からも高く評価していただけたことを、大変うれしく思います。地元の皆さまをはじめ、これまで応援してくださった全ての方々のご支援、ご協力のたまものであり、厚く御礼申し上げます。6月の正式決定において、埼玉初のユネスコエコパーク登録が実現するよう期待しております。登録後には、ユネスコエコパークの理念である環境の保全と地域資源の持続可能な活用を図るため、引き続き国や関係都県、市町村とともに全力で取り組んでまいります。
■エコパーク
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の自然保護事業の一つ。手つかずの自然の厳格な保護を目的とする世界自然遺産と異なり、自然と人間社会の共生を目指す。長期的に自然環境を保全する「核心地域」、核心地域を保護しつつエコツーリズムなどに利用する「緩衝地域」、人が暮らし自然と調和した発展を目指す「移行地域」で構成する。登録総数は122カ国の686地域(2018年7月時点)。