【ぷらっとTOKYO】二つの「宮」の由来たどる 渋谷の宮益坂と宮下公園
JRや私鉄、東京メトロが集まる東京・渋谷駅の周辺には、名前に「宮」の付く有名な場所が二つある。駅から東へ向かう宮益坂と、駅の北側に位置する宮下公園。その名に興味を引かれて雑踏の街を歩いた。(共同通信=松本泰樹)
宮益坂を中ほどまで上ると、左側へ入っていく細い道があった。その先の石段の上に鎮座する御嶽神社の参道だ。
社務所でもらった由緒書によれば、旧町名の渋谷宮益町や宮益坂の名称はこのお宮に由来するという。今はビルに囲まれて目立たないが、おそらく昔は地域のシンボルだったのだろう。境内に珍しいニホンオオカミのこま犬があることでも知られる。
宮益坂上の交差点を左へ折れ、美竹通りに入る。この周辺の旧町名は美竹町で、読み方は「みたけ」。地名辞典で調べると、その名の由来はやはり御嶽神社だった。
美竹通りの坂道を明治通りまで下ると、道路の向かい側に3階建ての商業施設「レイヤード・ミヤシタ・パーク」が見えてきた。全長約330メートルの細長い建物で、その屋上が宮下公園。旧皇族・梨本宮の邸宅に隣接していたことから命名された旧宮下町の名を引き継いでいる。
公園はスケートボードやボルダリングなどが楽しめる施設を備え、渋谷の街を一望する眺めも格別。1953年に開設され、66年に東京初の屋上公園として整備。2020年の再整備を経て現在の姿になった。
公園の下の3フロアには約90の店舗が集まる。1階の飲食店街「渋谷横丁」から道に張り出したテラス席は、外装やテーブル、いすを赤で統一。日が暮れると照明が入り、一帯がエキゾチックな雰囲気に包まれた。
【メモ】宮益坂上から表参道へ向かう青山通りで、芸術家岡本太郎さんのモニュメント「こどもの樹」に出合った。広大な旧梨本宮邸の敷地は、この付近まで広がっていた。