「埼玉県民はなぜディスられても怒らないのか」→「アイデンティティーを先延ばししているから」 埼玉の魅力「寛容さ」 ものつくり大の教授が講演 埼玉を学問的に捉える「埼玉学」を提唱
2025/03/11/10:31
ものつくり大学(行田市)の特別公開講座が3日、さいたま市大宮区であり、同大教養教育センターの井坂康志教授が「埼玉学―新時代の新しい教養」と題して講演した。井坂氏は埼玉の魅力について「自分のことも人のことも寛容に受け止められるメンタリティー」と指摘した。
井坂氏は埼玉を学問的に捉える「埼玉学」を提唱。昨年11月発行の「大学的埼玉ガイド―こだわりの歩き方」(昭和堂)の責任編集を務めた。
「ダサい」「埼玉都民」などの形容詞を、井坂氏は「埼玉の実像を知ろうとする想像力に欠ける」と指摘。自身の師であるオーストリアの経営学者P・ドラッカーの言葉を引用し「埼玉の『既に起こった未来』を探すことが埼玉学のアプローチ」と語った。
その上で、西が山岳部、東が平野という埼玉の地形や、車社会の象徴である道の駅と流通の最先端を担うアマゾンの倉庫の分布などを紹介し、埼玉は「自然、産業、精神的なコントラストが常に綱引きしている」と分析した。
映画「翔んで埼玉」のヒットで話題になった「埼玉県民はなぜディスられても怒らないのか」という疑問に、井坂氏は「アイデンティティーを先延ばししているから」と答える。「いろんなものが綱引きし合っている上にいる埼玉県民は常に動いており、アイデンティティーの確立は未来に行うことと考える」
アイデンティティーは時として厄介者。戦争や紛争をするのは確固としたアイデンティティーの国ばかり。井坂氏は「埼玉のアイデンティティーには揺らぎがあり、自らは変わり得る存在だという意識が自分も他者も広い心で受け止めるメンタリティーを生んだ」と話した。