埼玉新聞

 

ノーベル賞受賞者の米大学教授が講演 埼玉・所沢北高校 生徒や教員、卒業生ら約870人が同時通訳で聴講 「『興味を持つことが大事』という言葉に重みを感じた」

  • 生徒らの前で講義するフィリップス氏=10日、所沢市並木

    生徒らの前で講義するフィリップス氏=10日、所沢市並木

  • 生徒らの前で講義するフィリップス氏=10日、所沢市並木

 県立所沢北高校(所沢市並木)で10日、ノーベル賞受賞者で米メリーランド大学教授のウィリアム・ダニエル・フィリップス氏が、レーザーによる原子の冷却と捕捉について講演した。生徒や教員、卒業生ら約870人が同時通訳で聴講し、理解を深めた。フィリップス氏は「アインシュタインの重力の理論の矛盾を証明したい」と夢を語った。

 フィリップス氏は1997年に「レーザー光による原子の冷却・トラップ法の開発」でノーベル物理学賞を受賞。高速で動く原子にレーザーを照射することでほぼ静止した状態にし、捕捉する方法を開発した。この技術は原子時計などに活用されているという。

 講義のテーマは「時間、アインシュタイン、そして宇宙で最もクールなもの」。原子の振動を使った正確な時計の仕組みや、レーザー冷却の実験などについて解説した。レーザーで静止状態にさせた原子は予測値より冷たい状態であったことなどを振り返り、「レーザーによる冷却の技術で作った時計は日本でも標準時間を刻んでいて、国際的な基準になっている」と話した。

 質疑応答では、「行き詰った時の対処法は」「人生で大切にしてきたことは」などの問いに、「別のことを数時間、数日やって問題に向かうと、別の観点から解決策を思いつく」「家族、妻、子ども達が一番。そして冒険心。人生はいろいろな形で冒険が体験でき、研究は体験の一つ」などと答えた。「夢は何ですか」という生徒の質問には、「この正確な時計を使って実験し、アインシュタインの重力の理論が間違いであるということを証明したい」と意欲を語った。

 理数科2年生の藤原花帆さん(17)は「ノーベル賞受賞者の『興味を持つことが大事』という言葉に重みを感じた」。吉沢穂香さん(17)は「量子の小さい世界のことが、私たちの世界の基準になっていることが興味深い」。佐藤俊平さん(17)は「GPSなど、いつも使っているものに関わっていることにびっくりした」と話した。

 同講義は化学への興味、関心の向上を目的に行われる、ノーベル賞受賞者による学生講義「ノーベル・プライズ・ダイアログ東京2025」の関連イベントとして実施された。日本の高校で行われるのは初めて。

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