埼玉新聞

 

天国の夫が見守る中…妻は15年以上、交番に花届けた 県警表彰、妻「警官に賞状を。私は夫と再会したら」

  • 感謝状を手に笑顔を見せる永島政代さん(中央)。左は青木交番の荒木幹雄巡査部長、右は同交番の工藤平等巡査=14日午前、川口署

 花で癒やしを届け、また自身も花の存在を心の支えにしてきた女性が“勲章”を手にした。埼玉県警川口署(岩崎茂署長)は14日、青木交番に15年以上も鉢植えを届け、来所者らに安らぎを与えるとともに地域の防犯意識の向上に貢献したとして永島政代さん(80)=川口市幸町=に感謝状を贈った。4年前に亡くなった夫賢介さん=当時(81)=も好きだった季節の花々。永島さんは「交番の方が喜んでくれていたとしたら、すごく幸せ。(夫と)再会できたら賞をもらったことを報告したい」とほほ笑んだ。

 交番に花が飾られるようになったのは15年以上も前。当時、永島さんは家族らで機械加工業を営んでいて、自宅から仕事場に自転車で向かう際に、青木交番のプランターを見て「寂しい」と感じたのがきっかけだった。会社の近所の人たちと花を植えて楽しんでいたこともあり、当時の交番勤務員に「私が鉢植えをお届けしてもいいですか」と尋ねたことが始まりだった。

 パンジー、スミレ、マツバボタン…。その時期に合った花を選び、根の張った一番いい状態で季節ごとに年4回、2鉢ずつ飾ってもらった。

 花は交番勤務員の士気を上げ、地域住民らに安らぎを与えた。青木交番の荒木幹雄巡査部長(39)は「日々、事件事故を多く扱っているので、朝や仕事終わりに水をあげると気持ちが和らぐ」、工藤平等巡査(31)も「花を見るといろいろな方に応援されて交番が成り立っているなと実感できる」と思いを込めた。

 一方で永島さん自身も、花から力をもらった。2007年3月に賢介さんが脳梗塞で倒れて以来、在宅の介護で心が折れそうになった。そんな時、「次の花を届けるまで頑張ろう」と思えたという。

 家族のお気に入りが、青木交番前を通るドライブコースだった。長女加依さん(53)がハンドルを握り、賢介さんが助手席へ。後部座席に永島さんが乗って出発する。脳梗塞の影響で言葉が出づらかった賢介さんも交番の鉢植えを目にするたびに、顔をほころばせ「お母さんの花、今日もきれいに咲いてるね」とはっきりと話していたという。

 18年7月に賢介さんは亡くなったが「すぐにやめちゃうのは寂しい」と夫の顔を思い浮かべながら続けた。ただ80歳になった今年2月に区切りをつけ、感謝の思いを記した手紙を交番相談員に手渡した永島さん。「交番の方が水をあげて面倒を見てくれたからこそ。本当は交番の方に感謝状を贈ってほしかった」と包み込むように優しく笑った。

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