おばあちゃんも「ぷよぷよ」 70、80代、好プレーに歓声 eスポーツで認知症予防、鶴ケ島市が活用支援
新型コロナウイルスの感染拡大は、生活のデジタル化を加速させた一方、人々が触れ合う機会の減少をもたらした。懸念されるのが、高齢者を中心とした「デジタル弱者」の孤立だ。鶴ケ島市は今年度から、新たに高齢者デジタル活用支援を開始。継続的なeスポーツの取り組みでは、認知症予防などを目指す。
■体験会に82人参加
6月14日、市内の富士見市民センターに73~82歳の市民9人が集まった。画面を食い入るように見詰め、歓声が起こる。参加者は家庭用ゲーム機を使い、「ぷよぷよeスポーツ」と「太鼓の達人」を体験した。指導するのは、川口市に住むプロeスポーツ選手のlive(リベ)さん(33)ら。市が開いた「シルバーeスポーツ体験&スマホ教室」だ。6月に各地で8回催され、計82人が参加した。
同センター会場を訪れた今岡文子さん(82)は3年前に難聴を発症。コロナ下では趣味のグラウンドゴルフの集まりなどが中止され、6月に再開したばかりだという。1人暮らしで地域との縁が薄れ、「絶望的な気持ちになり、一直線に老いてしまうと思った」と申し込み。「気分転換になるし、皆さんと交流できるのもいい」とほほ笑む。
■ゲーム機を常設へ
市は体験会のほか、「シルバーeスポーツ&脳トレ体験」もスタートした。65~83歳の参加者24人は、6月20、21日に市役所で認知機能検査を実施。市老人福祉センター「逆木荘」に8月中旬から常設されるゲーム機で週2回程度、eスポーツを楽しんでもらい、12月に再び行う認知機能検査で効果を検証する。
eスポーツ関連事業を委託された企業の一つで、筑波大学の研究から設立された「THF」(本社・茨城県つくば市)の薮下典子健康づくり支援部部長補佐(47)は「自治体が一定期間、eスポーツを活用した取り組みを行うのは珍しい」と言う。効果については、「目と耳から同時に刺激を受けつつ情報を処理するので、認知機能をたくさん使うはず」と期待を抱く。
■うつ傾向が30%に
今年度、市は一般会計当初予算で高齢者デジタル活用支援に約833万円を計上した。事業開始の背景には、市が昨年度行った高齢者実態把握調査の結果がある。75歳以上の市民で、要介護や要支援認定を受けていない6910人を対象にアンケート。7項目のリスク要因のうち、1個でも該当した人の割合が56・2%を占め、「うつ傾向」が最も高い30・6%だった。
市健康長寿課の木村貴治課長(49)は「eスポーツをきっかけけにして、コロナ下の高齢者にデジタル弱者を出さず、生活の質を上げたい」と説明。「継続して行い、認知症などで要介護になることをできるだけ防げれば」と、事業の定着を見据えている。