埼玉新聞

 

新たに6件を指定 埼玉県指定文化財、合計740件に ニホンオオカミの標本や紺紙金字法華経

  • 秩父山地のニホンオオカミ毛皮標本

    秩父山地のニホンオオカミ毛皮標本

  • 秩父山地のニホンオオカミ毛皮標本
  • 紺紙金字法華経

 県教育委員会は県文化財保護審議会(菊池健策会長)からの答申を受け、11日の定例会で県指定文化財に新たに加須市の典籍「紺紙金字法華経(有形文化財)」など6件を指定すると決定した。14日の県報告示で正式に指定となる。また、追加指定が1件あり、県指定文化財は合計740件になる。

 新たに指定されるのは紺紙金字法華経のほか、小鹿野町の「木魂(きむすび)神社の舞台(有形民俗文化財)」、秩父市・長瀞町・ときがわ町の「秩父山地のニホンオオカミの毛皮・頭骨標本(天然記念物)」、長瀞町の「秩父鉱山産鉱物・岩石標本附関連資料一式(天然記念物)」となっている。

 県教育局文化財・博物館課によると、紺紙金字法華経は徳性寺が所有する延暦寺蔵紺紙銀字法華経系統の全8巻の転写本。同系統の転写本は現在、国内では5件しか確認されておらず、見返し絵の表現などから制作時期は12世紀半ば~後半と、中でも古いものと推定されている。また、8巻の見返し絵8図を全て備えている唯一の転写本のため、貴重だという。

 木魂神社の舞台は、1950年に老朽化した神楽殿を歌舞伎も上演できるよう再建した、瓦ぶきの寄せ棟造りの舞台。毎年5月3日の木魂神社例大祭で歌舞伎と十六神楽が上演されており、標高320メートルの山頂部に立地する地形を利用し、高い方に観客席、低い方に舞台や楽屋を設ける工夫が施されるなど、秩父地域の人が持つ歌舞伎を愛する心を現在でも伝えている点が評価された。

 秩父山地のニホンオオカミの毛皮・頭骨標本は、比較的狭い範囲にまとまった数の資料が残されているため、ニホンオオカミの生態の研究など学術的観点から重要な資料だと評価。また、秩父地域では標本を魔よけなどに利用していたことから、地域信仰やオオカミとの結び付き、地域の風習を伝える民俗資料としての価値もあるという。

 秩父鉱山産鉱物・岩石標本付関連資料一式は、秩父鉱山最盛期(1951~55年)に採掘された鉱物標本で、結晶の質や大きさなどが国内でも第一級の産状で保存されている。地質図など産出に関連する書類が残されていることから、鉱床学・鉱物学上の学術的価値が評価された。

 そのほか、杉戸町の「高野砂丘」が、中川低地の河畔砂丘群に追加指定された。

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