埼玉新聞

 

育てたヒラメ…食べる?食べない? 小学校で命について考える授業 半年育てたヒラメ、締めくくりで食べる予定が→予想外のアクシデント

  • 子どもたちが学校で半年間、大切に育ててきたヒラメ

    子どもたちが学校で半年間、大切に育ててきたヒラメ

  • 子どもたちが学校で半年間、大切に育ててきたヒラメ
  • 授業で子どもたちに命の大切さを伝える日本養殖振興会の斉藤浩一さん=春日部市立川辺小学校

 春日部市立川辺小学校(梶村麗子校長、児童数374人)で、ヒラメの養殖を通じて命について考える授業が行われた。学校の水槽で半年にわたり、大切にヒラメを育ててきた5年生64人。この日は、締めくくりとしてヒラメを食べる予定だったが、飼育の過程で予想外のアクシデントが発生していた。食べるべきか、食べないべきか。子どもたちは議論を交わし、命の大切さと扱う難しさを学んだ。

 幸手市のNPO法人「日本養殖振興会」が主催し、同校は昨年度も参加している。昨年9月に同会から10匹のヒラメを譲り受け、校内で飼育。子どもたちは毎日、交替で餌やりや水槽の清掃を行い、日誌に成長の様子をつづってきた。

 育てた生き物を食べる体験を通じて、命とそれを支える人々への感謝の気持ちを養ってもらうのがプロジェクトの狙い。5、6年生が参加した昨年度は20~25センチに成長した5匹のヒラメを食べた。ところが、今回は8匹が死んでしまい、残った2匹も10センチ前後と小さい。果たして、食べるべきか否か。

 「みんなはヒラメをどうしたい」。授業で講師を務めた同会代表理事の斉藤浩一さん(57)が問いかけた。「かわいそうだから育てたい」「食べないと命の大切さが分からない」「大きくしてから食べよう」「1匹は食べて、もう1匹は海に逃がす」。子どもたちの反応はさまざま。意見はまとまらず、斉藤さんが研究用途で県内の高校への移譲を提案したところ多数の賛同を得て、この日は用意した別のヒラメを食べた。

 授業を受けた一ノ渡彩央(あお)さん(11)は「せっかく大切に育ててきたヒラメだから、食べたくなかった。生き残ってくれてうれしい」とほっとした様子。山下煌介さん(10)は養殖の苦労を知り、「これからは育ててくれる人たちに感謝して、食べ物を味わいたい」と語った。

 斉藤さんは「命を扱うのは難しい。大切に育てていても、死んでしまう。大変な思いをしながら、生き物を育てている人たちがいることを知ってもらい、命に向き合ってほしい」と呼びかけた。

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