「口座に犯罪収益」で逮捕状←うそで現金だまし取る手口が目立つ 送金の限度額が大きいネットバンク悪用も 被害額が過去最大53億円 2024年の特殊詐欺被害 埼玉県警まとめ SNSでの投資詐欺、ロマンス詐欺が大幅増
県警が2024年の1年間で認知した特殊詐欺の被害件数(暫定値)は、前年比252件増の1588件で、統計を取り始めた04年以降で過去最多だったことが県警のまとめで分かった。被害額も22億518万円増の53億8912万円で過去最大を記録。交流サイト(SNS)型投資・ロマンス詐欺が大幅に増加し、送金の限度額が大きいネットバンキングを悪用した事件の急増が全体の被害総額を押し上げた一因とみられる。
県警特殊詐欺総合対策本部によると、認知件数の内訳はオレオレ詐欺が100件増の624件と、全体の39・2%を占めて最多。被害額は20億8269万円増の35億9296万円に上った。次いで還付金詐欺(387件)、預貯金詐欺(272件)もそれぞれ49件、127件増加した。
オレオレ詐欺では、警察官をかたり「口座に犯罪収益がある」などとうそを言って、メッセージアプリなどで逮捕状などを送信した上で口座預金をだまし取る手法が目立つ。最も大きい被害金額は、志木市の70代女性が2億3千万円をだまし取られた。
県警が被害拡大の要因として挙げたのは、ネットバンキングを悪用した特殊詐欺が増加したことだ。高額のやりとりが可能で、窓口を介さずインターネット上の操作のみで完結する利便性を逆手に取り犯行に及ぶもので、106件増の129件に上った。被害額は16億8224万円で、特殊詐欺全体の被害額のうち約3割を占めた。特殊詐欺全体の1件当たりの被害額339万円に対し、ネットバンキングが使われた特殊詐欺は1304万円で3倍を超える。
SNS投資・ロマンス詐欺の被害件数は、前年同期比159件増の254件。被害総額は23億120万円増の38億332万円で、約2・5倍に拡大した。
被害が拡大する一方で、検挙も増えた。特殊詐欺の検挙件数は130件増の578件で過去最多。検挙人員も79人増の239人で過去2番目に多かった。検挙人員は全体のうち、半数以上の133人が受け子だった。匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)の関連者が多く、カンボジアなど海外拠点の犯罪グループの摘発や組織改編などによる捜査体制の強化の効果が一定程度あったとみられる。
県警は昨年から、県内に本店を置く25の金融機関と不正利用口座の情報共有を行う全国初の協定を結んだ。24年12月末までの間、金融機関から県警に対して59件の不正入金が疑われる情報提供があり、うち13件は協定締結前には検知できなかった少額の不正入金だった。県警は「不正入金の金額が拡大する前の防止が可能になった」と、活用を推し進める方針を示している。