「明日に引き継ぐ さいたま百景」を出版、消えてほしくない445の風景を紹介 名所でなくても、将来のさいたま市にとって大事 百景選定委「平凡で何もないような都市だけど、実はそうじゃない」
さいたま百景選定市民委員会が18日、「明日に引き継ぐ さいたま百景」を出版した。同書では、気候変動や少子高齢化など社会が大きく変化する中で、未来に引き継いでいきたい445の風景を紹介している。同会幹事長の中津原努さん(81)は「いわゆる名所や旧跡でなく、ごくありふれた風景だけれども大事というのを選んだ。これからの街づくりに生かしてほしい」と話している。
さいたま百景選定市民委員会は2007年発足。市民からまちの姿を表している風景を募り、10年に「市民が選んだ さいたま百景」を出版した。
その後、時の経過とともに風景にも変化が生じ、19年から改訂版作りに向けて動き始めた。当初は、新たに風景を募集し、市民参加型で進めていくことを考えていたが、新型コロナの流行で困難に。「コンセプトを明確にして、世の中に問いかける本へと制作方針を変更した」という。
建築家やまちづくりのNPO法人理事ら19人の編集委員が意見を出し合い、コンセプトを(1)水と地形(2)まちの記憶と文化(3)現代の市民生活の三つに決めた。
本では、川岸や地域の祭りなど445の風景を紹介している。絵になる風景を中心に取り上げた前作と異なり、今回はありふれた風景の写真が並ぶが、いずれも「将来のさいたま市にとって消えてほしくない大事な風景」だ。
「江戸時代から続く祭りの裏には、懸命に支えている地域の人がいる。地形の微妙な起伏や斜面の林が、災害や水害の時に大きな意味を持ってくる。平凡で何もないような都市だけど、実はそうじゃないんだと伝えたい」と中津原さんは語る。
前作で紹介した風景の今についても調査し、最終章で報告している。今後は、完成した本をもとに市民との意見交換会やワークショップ、街歩きなどを実施する予定という。
問い合わせは、さきたま出版会(電話048・711・8041)へ。