許せない…カップルがギョーザ盗み、彼氏に罰金20万円 必死の「無人販売所」怒り 抑止力ある“善意”も
新型コロナウイルス下の非接触需要を追い風に、数を増やしている街中の無人販売所。ギョーザやラーメンから焼き菓子、肉類まで多岐にわたる食品などを販売する店舗が県内でも多く見受けられるようになった。意外性が話題を呼んでいる一方、相次いでいるのが人目がないことにつけ込んだ窃盗だ。善意と信用の上に成り立っている無人販売所。被害に遭った店舗は「許し難く、悔しい」などと怒りをあらわにしている。
6月10日午後0時3分ごろ、さいたま市大宮区天沼町1丁目にある「一代元餃子無人販売所」を訪れた交際する男女2人が、ギョーザなど総額1万1500円相当の食品を盗んだとして同16日に窃盗容疑で逮捕された。
同店では今年5月以降からこれまでに5件の窃盗被害が確認されており、いずれも2人による犯行だったとみられる。被害総額は5万2350円。7月6日、男はさいたま簡裁から罰金20万円の略式命令を受け、女性は不起訴処分となった。
同店を運営している一和フーズ(さいたま市北区)で無人販売店などを担当する室井豊和統括本部長は「(ギョーザは)野菜の切り方ひとつとってもこだわっていてほぼ手作り。作った従業員のことを思うと許せない」と声を落とす。同社が運営する店舗で窃盗被害に遭ったのは今回が初めてだという。
同社は新型コロナの影響で運営していた複数の飲食店が閉店に追い込まれた。売り上げが大きく減り、経営危機から抜け出そうと、昨年7月から始めたのが無人販売店だった。今月には30店舗目の開店も予定され「好評を頂き、売り上げもV字回復した」(室井本部長)という。
県内では同様の窃盗が複数発生している。無人販売所での窃盗について駿河台大学心理学部教授で犯罪心理学が専門の小俣謙二教授は「当然のことだが一番の要因は人の目がないこと」とした上で、今後できる対策として「視覚や聴覚などさまざまなアプローチで防犯を訴えること」と指摘する。
例えば、防犯カメラの設置場所。俯瞰(ふかん)位置だけでなく、商品棚などに設置するなど無人でも「見ている」ということを心理的に訴えかけることで犯行を抑止できる。さらに無人販売所の販売形態が利用客の善意を信用することで成り立っていることから「裏切ってほしくない」と善意に訴える呼びかけを店内放送することも効果的だという。
窃盗被害への対策として、同社はこれまで従業員間で共有していた店舗の巡回チェック表を店内の目立つ場所に設置するほか、管内警察署との連携をこれまでより進め警戒などを行うという。
室井本部長は「今後模倣犯が出てくることも想定して、できることはためらわずやる。安心しておいしいギョーザを買い求めてもらいたい」と呼びかけた。