【シトウレイの街角スタイル研究所】「2025年春編」ボロが「かっこいい」に 背景に世界的古着ブーム
シトウレイです、こんにちは! 今回も昨秋のパリ・コレクション会場周辺でのスナップから見えてきた若者のトレンドのご紹介です。
突然ですが皆さま、「indie sleaze(インディー・スリーズ)」って言葉をご存じでしょうか? 今、世界中で盛り上がっている言葉で、インディーズロックのインディーと、いかがわしいという意味のスリーズを足した造語です。
海外の解釈によると、「2000年代後半から12年ごろにかけてのロンドンのストリートスタイル」とされています。それがリバイバルで数年前から米国で火が付いて欧州に…というような形で広がっています。
長らく続く、陽気でイケイケな感じの「Y2Kトレンド」が陽キャとしたら、逆のダークで気だるそう、おしゃれな陰キャみたいなイメージ。教室の窓際でだるそうにしているけど音楽やカルチャー(しかもアングラ系!)に詳しくて、実は人気…みたいな子! 特定のアイテムではなく、グランジやボロボロな古着といった雰囲気的な要素がキーワードです。
日本では2000年代中ごろの動きと捉えてもらうといいかと。気になる方は、この時代のストリートスナップの雑誌を見てみるといいかも。
さて、この流れも相まって、彼らの好む味わい深い、率直に言うと汚めな古着、いわゆる「ボロ」がいきなり「かっこいいもの」に。背景には世界的な古着ブーム、値段の高騰があります。ここ数年、ロックTシャツやアニメTも何十万、何百万選手がゴロゴロ。
また、アメカジのビッグトレンドもあり、古着がさらに注目されています。理由はアメカジは新品より、味があるものの方が価値があるから。
つまり、(1)古着の高騰(2)一般層への古着の浸透(3)アメカジブーム(4)インディー・スリーズ―の4要素が結び付き、モード界隈の女性陣にも汚い味ある系の服にトライする人が現れ始めたんです。
ずっとパリコレを撮り続けてきた私の中でも、これは初めての事態です! 1シーズン前は絶対NGだったものが、この半年で「ナシよりのアリ」から「アリよりのアリ」に。人の価値観なんて“秒”で変わりますね。
ファッションのみならず社会のニュースを見ても、ここ数年でダイナミックな価値観の変化を皆さん肌で感じているはず。大事なのは、今までの価値観が唯一無二の正解だと捉えないこと。変化するのがデフォルト(基本)だぞーって気持ちでいることが、この世の中に柔軟に対応するために必要かなと思います。
それではまた次回お会いしましょう!(ストリートスタイルフォトグラファー、写真も)
【シトウレイ】石川県生まれ。早稲田大卒。雑誌で写真家として活動を始め、日本を代表するストリートスタイルフォトグラファーとして国内外で高い評価を得る。テレビやラジオ、講演など幅広く活動するほか、ユーチューブで最新のファッション事情をリポートしている。