埼玉新聞

 

会計の不正処理、和光市が20年繰り返す 04年度に不足が発生し次年度から流用、決算書を改ざん…以後は不足が毎年発生、不正処理が慣例に 昨年、判明するも公表せず 市「市民の保険料に上乗せも含め検討」

  • 【役所】和光市役所=埼玉県和光市広沢

    和光市役所=和光市広沢

  • 【役所】和光市役所=埼玉県和光市広沢

 和光市が介護保険事業で20年間にわたり、介護事業者に単年度に支払う給付費の不足分を次年度の介護保険特別会計から流用し、決算書を改ざんするなど地方自治法に抵触する不正処理を行っていたことが、29日までに分かった。不正処理は2004年度から23年度まで継続され、市は24年度の給付費の不足分約3億円を補填するため、同特別会計予算の準備基金から9千万円、一般会計の財政調整基金から2億1千万円を繰り入れる補正予算を計上し、3月議会で可決した。

 市長寿あんしん課によると、介護保険は利用者が1~3割を負担するほか、40歳以上の市民の保険料で約50%、国と県、市の負担金で約50%を賄っている。年度ごとに特別会計で予算規模を計上し、毎月1回、国民健康保険団体連合会を通じて事業者に給付費を支払っている。

 04年度の支払いに不足分が発生することが判明し、同年12月議会で補正予算を組んだものの、予測が甘かったことから、給付費約1億2千万円が不足した。このため、当時の担当職員が次年度の特別会計から流用し、負担金請求で国や県に提出する決算書抄本を改ざんしていた。

 これを契機に毎年、給付費1カ月分の不足が発生。職員の間で同様の不正処理が慣例となり、20年間にわたり次年度予算の流用と決算書抄本の改ざんが行われていた。介護保険の利用者は年々増加。給付費は右肩上がりに増え続け、24年度は1カ月分の支払いが3億円に上った。

 昨年6月、同課で決算書と国に提出する決算書抄本の突き合わせ作業を実施し、不正処理が判明。しかし、市は新年度予算の見通しを立て、特別会計の補正で修復することを前提に公表を控えていた。

 04年度の担当職員らは聞き取り調査に対して、「当時の係長から不足分は次年度予算から調達する指示を受けた」と話したという。この間、不正の事実を把握していたものの、上司に報告していなかった同課幹部がいたことも分かり、市は口頭注意を行った。

 3月議会で補正予算に計上した補填分3億円について、同課は「一般会計からの繰入金2億1千万円は同会計への返還が原則のため、今後は市民の保険料に上乗せすることも含め、市の介護保険運営協議会で善後策を検討しなければならない」と話している。

ツイート シェア シェア