始業前の労働は「黙示の指揮命令」 埼玉県立がんセンターに未払い賃金の一部支払い命令 終業後分は認めず
2022/07/30/00:00
県立がんセンターで働いていた看護師の女性が、時間外労働に対する割増賃金が支払われていないとして、県立病院機構に対し、未払い賃金の支払いを求めた訴訟の判決が29日、さいたま地裁で開かれ、市川多美子裁判長は、被告に未払い賃金の一部、約44万円などの支払いを命じた。
原告女性は、時間外労働に対する割増賃金が支払われていないとして、始業前や残業に関する未払い賃金などを求め、約372万円などを請求。
病院側は、時間外労働の義務は命令によって発生し、時間外勤務手当も命ぜられた職員に対し支給されると主張。原告に対しては命令した事実はないとしていた。
判決理由で市川裁判長は、システム上、原告がパソコンを使用すれば「始業前の業務を行っていることを知ることができた」と指摘。その上で、始業前業務を禁じたりする形跡はないことから、「黙示の指揮命令の下で行われたものと評価するのが相当」とした。
一方で「病院側の明示などに基づいて終業時刻後に労務を提供したと認める証拠がない」などと、終業後の未払い賃金については認めなかった。