埼玉新聞

 

ため息交じり…降ひょう、ナシ農家直撃 久喜で県内最大被害 県が支援決定 防ひょうネットは高額で課題も

  • 傷が付いたナシの果実を摘果しながら被害を説明するナシ農家の鈴木和夫さん=久喜市除堀

  • 降ひょうで傷が付いたナシの実

 今月4日、県内で降ったひょうはナシ農家を直撃した。特産地の久喜市では、市内のナシ畑約10ヘクタールで果実に傷が付くなどして、県内で最も大きな被害が出た。降ひょう被害を受けたナシ農家は「傷が付いたり、変形した果実は商品にならない。被害はさらに増える」とため息交じりに話した。

 「これも駄目、こっちも駄目。ちょっとでも傷が付くと駄目なんだ」。久喜市除堀でナシを栽培する鈴木和夫さん(71)。直径約2センチのナシの幼果に、降ひょうによる傷が付いていた。鈴木さんは被害を受けた実を摘む摘果をしながら、被害について説明。摘果に費やす時間は例年の3倍にも及んでいるという。

 4日午後、ひょうが降ったのはわずか20分ほどだった。ひょうの大きさは5~8ミリ。ひょうに打たれたことで果実の表面をこすっただけでも、傷が付いたり、変形して商品にならないという。

 県は17日、県農業災害対策特別措置条例に基づき、降ひょう被害を特別災害に指定。農薬や肥料を購入する際の費用を補助するなど、被害農家への支援を決めた。

 県内で最も大きな被害が出た久喜市。市議会全会派が13日、対応などを市に要望した。市は20日、議会全員協議会を開き、被害状況や今後の対応などを報告。梅田修一市長は「県や関係機関と連携し、収穫量の確保や販売促進に向けた取り組みを支援したい」と述べた。

 市内での被害は、面積が計10・92ヘクタール、戸数40戸、被害金額は4306万円に上るという。市は今後、ナシの販売や規格外品を活用する販促に向け、補正予算を組む予定だ。

 市は防ひょう用ネットの効果についても報告。ネットを設置していた農家の被害はほとんどなかったという。市はネット設置を推進するため、県への要望を含め、費用補助の検討を進めるとしている。

 市農業振興担当は、収入保険や共済制度の仕組みにも触れ「組合を通じてリスクを軽減する保険や共済の加入拡大を図るなど、周知を広めていきたい」と述べた。

 被害を受けた鈴木さんは、防ひょう用ネットを設置していなかった。今後の設置にも消極的だ。費用が高額なだけでなく、風通しが悪いためダニを誘発しやすく、台風でネットが飛ばされるなどの課題もあるという。

 久喜地域の特産品だが、かつてに比べてナシ農家はめっきり減った。後継者が不足し、除堀地域で残っている農家はわずか4軒だという。鈴木さんは近年続く高温障害、ダニ対策、台風など収穫までの苦労を上げ、ひょう被害について「大きくならなければ分からない小さい傷もある。収穫する最後まで分からない」と不安を口にした。

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