<甲子園>34年間、埼玉代表の宿舎だった伊丹シティホテル閉館へ 市民が駆け付けた浦学感動エピソードも
1988年から34年間、春と夏の甲子園で埼玉代表の宿舎になっている兵庫県伊丹市の伊丹シティホテルが、来年3月末に閉館する。施設の老朽化や新型コロナウイルスの影響もあり、今夏の第104回全国高校野球選手権大会に出場した聖望学園を最後に代表校の受け入れを終えることになった。創業時から勤務する林宏明支配人は埼玉球児を見守ってきた思い出を振り返り、「何物にも代え難い日々だった」と感謝した。
同ホテルは、市内で唯一の婚礼や宴会ができる施設として1987年に開業した。当時、宿舎の施設は旅館が大半を占めていた。長期休暇と大会期間が重なり、代表校を長期間受け入れると一般客の宿泊が限られて営業面に影響が出てしまう。周囲のホテル関係者からは否定的な声があったという。
それでも、翌88年夏から埼玉代表の宿舎として受け入れを始めた。同年、全国4強に進出した浦和市立(現市浦和)から始まり、春日部共栄、花咲徳栄など歴代の代表校が宿泊。サポートを続ける中で最も配慮してきたのが食事だという。「飽きないように和・洋・中のローテーションで変化を与え、栄養面やアレルギーに注意しながら提供してきた」と林支配人。
長年見守ってきた中で、忘れられない思い出も。「浦和学院は選手と指導者が、朝散歩をしながら掃除する。その姿がうわさになって(2013年春に)優勝した時は、約200人の市民がホテルに駆け付けてバスを囲んだのは感動した」。滞在した代表校の選手がその後、社会人になってお礼に訪れるなど現在でも交流は続いている。
ただ、築35年が経過し、施設の老朽化で約30億円の大規模改修が必要なことに加えて、コロナの影響で収益の見込みが見通せないことから、来年3月末の閉館が決定した。
林支配人は「残念な気持ちでいっぱいだけど、あの時、受け入れることを判断して良かった。チームを受け入れることによって従業員一同のモチベーションになっていた。感謝の気持ちが強い」と34年間で訪れた代表校に感謝の思いを伝えた。