埼玉の絶景、今年は“おあずけ” 人気スポット「天空のポピー」、昨年の開花不良で土壌をメンテナンス 実行委、雑草の駆除に専念「来年、きれいな花を見せられるように」
5月中旬になると、皆野町と東秩父村にまたがる県秩父高原牧場(標高580メートル)の牧草地には約1200万本のシャーレーポピーが咲き誇る。羊山公園「芝桜の丘」(秩父市大宮)のシバザクラ開花終了後の、秩父の人気スポットとして、毎年多くの見物客を楽しませているが、今年はポピーの絶景はおあずけ。昨年の開花不良を受けて、牧場関係者は今年、ポピーの種をまかずに土壌のメンテナンスに努めている。「来年、きれいな花を皆さんに見せられるように、できる限りを尽くす」と日々、除草作業に汗を流している。
同牧場内の約4ヘクタールの敷地を埋め尽くす赤、白、ピンクのシャーレーポピーは、高原の爽やかな風に揺られながら、天まで伸びていくような花道を演出する。県や皆野町、東秩父村の観光課職員らで構成するポピーまつり実行委員会は開花期間中、会場内で特産品販売などを行うイベント「天空のポピー」を開催し、毎年地域を盛り上げている。
同委員会によると、天空のポピーは2008年から始まり、19年までの年間来場者数平均は約5万人。18年時は過去最多の約6万8千人が来場した。コロナ禍の中止期間を経て、23年からイベントを再開。昨年は外来種の雑草繁茂(はんも)などによる生育、開花不良に見舞われ、来場者は1万6千人程度だった。
ポピーの管理を10年間務めている同牧場の野沢智浩さん(55)は、「昨年は、過去最低といっていいほど花の状態が悪かった」と振り返る。ポピーの種まきは毎年11月ごろに実施。昨年時も発芽までは順調だったが、冬に入るとアメリカフウロ、オランダフウロなどの外来種の雑草が例年以上に生い茂り、ポピーの育成を阻害した。
「フウロ草は、ポピーの葉の上に覆いかぶさるように伸びる。繁殖力が強く、ポピーと同時期に成長するので、除草剤などでの駆除は難しい」と野沢さんは説明する。昨年は週1日、10人態勢で雑草駆除を行ったが、手作業では歯が立たず、例年の2割程度しか花が開かなかった。
「7、8年前から雑草との戦いが続いていたので、いずれこのような事態になるのではと予感はしていた」と野沢さん。外来種の雑草が増えた原因は、「ポピーの種」や「会場の遊歩道に敷くおがくずのチップ」の中などに雑草の種子が混ざってしまったことなどが考えられる。
同委員会は「ポピーの種をまかずに、雑草駆除に専念する期間が必要」と判断し、本年度のイベント開催を見送った。野沢さんは現在、トラクターを使って土の掘り返しを繰り返す「耕起(こうき)」作業を続けている。「雑草が生えやすい環境をあえてつくり、一気に駆除していく。どれだけ効果があるかは分からないが、過去の教訓を生かして、来季に花を咲かせたい」と意気込んでいる。
同実行委員、皆野町産業観光課の三橋博臣課長(51)は「来年は再び、一面真っ赤に広がるポピーをお届けできるよう、しっかり準備していきたい」と話していた。