藤原竜也さん、「どでかい」役…シェークスピア劇「マクベス」の主演に挑む 秩父出身の実力派俳優、土台は“非常に厳しい先生”…演出家・蜷川幸雄さんの「忘れてはならない思い」とは 5月8日開幕
ギャンブラー、死を操る青年、ハムレット、魔法使い…と多彩な役柄を自在に演じてきた秩父市出身の俳優・藤原竜也さん(42)。そんな実力派が「どでかい」役と語る、シェークスピア劇「マクベス」の主演に挑む。彩の国さいたま芸術劇場(さいたま市中央区)での上演で、5月8日に開幕する。
「どんな人にも楽しんでほしい」という思いを胸に、俳優・吉田鋼太郎さん(66)が芸術監督を務める「彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd」の第2弾。3人の魔女の予言にそそのかされたマクベス(藤原さん)が、王を殺して王座を手にするも、良心の呵責(かしゃく)にさいなまれる物語。マクベス夫人は土屋太鳳さん(30)、そして吉田さんが魔女役として出演するなど話題の作品だ。
どす黒い野心を抱えつつ、罪にもだえ苦しむマクベス。藤原さんは「演技的に言えば、あらゆる感情を演じる必要がある。ジェットコースターのように転落するので、独白一つとっても同じ感情のものがない。(自分の人生に)こんなどでかいものが転がっていたとは」と意気込む。
演出家・蜷川幸雄さん(2016年死去)に見いだされ、15歳だった1997年、舞台「身毒丸」でデビュー。蜷川さんから「おまえの芝居は飽きた」と怒鳴られ、稽古で泣かされたことは数えきれない。「とにかく、底まで突き落とす、非常に厳しい先生だった。でも人間の本当の声、というものを求めていて、『変わるためにどうするのか』を考えさせられた。あの教育は今の時代に通用しない。けれども(教えが)自分の土台となっている」と語る。
その蜷川さんが取り組んだのが、同劇場の「彩の国シェイクスピア・シリーズ」(1998~2023年)だ。藤原さんも「ハムレット」などに出演。吉田さんが引き継いだシリーズの重要性をこう語る。「埼玉に世界の中心となる劇場をつくりたい、という蜷川さんの思いを忘れてはならない」
舞台、テレビ、映画と華やかに活躍中。演じることを楽しんでいるかと思いきや「役者は孤独で切ない作業。もっと表現することを楽しめればいいのに…」。けれど、蜷川さんら偉大な演劇人の闘う姿を見てきたからこそ「追いかける気持ちはある」と静かに意欲を燃やす。
自身を「ザ・秩父の人」と称する。子どもの頃の夢は、大好きな浦和レッズと埼玉西武ライオンズの選手になること。荒川の上流で魚を手づかみし、山では秘密基地をつくって遊ぶ、自然を駆け回る少年時代。「蜷川さんから『秩父の山猿』と呼ばれてました」と笑う。
県民へのメッセージを聞くと、「久々に埼玉に凱旋(がいせん)する。ぜひ秩父の山猿を見に来て」とチャーミングな笑顔を見せた。マクベスは5月8~25日まで。
チケットなど問い合わせは、同劇場(電話0570・064・939)へ。