埼玉新聞

 

再び笑顔の集う場に…小鹿野の廃校舎「集学校」に 旧長若中、都内企業に無償貸し出し 地域交流の場を創出

  • 「集学校」に生まれ変わる旧長若中学校の校舎=埼玉県小鹿野町般若

 2016年に統廃合となった小鹿野町の旧町立長若中学校が、中古パソコンのリユース会社「リングロー」(東京都豊島区)に25年10月まで無償で貸し出される。旧長若中は12月から、地域交流の場を創出する「長若集学校」として運営される。全国的に少子化に伴う児童生徒の減少を要因として、公立学校の統廃合が進む一方、跡地利用などが課題として残る。同町では廃校舎を無償で貸し出すなど、統廃合となった中学校全てが利活用されることになった。

 同町と同社は3日、施設利用に関する契約を締結。旧長若中の校舎は鉄筋コンクリート2階建て、延べ床面積約1643平方メートル。同社は今後、町民が無料で利用できるパソコンやスマートフォン相談室、地域交流スペースを設置するほか、パソコン周辺機器の販売やワークスペース貸し出し事業などを展開し、収益基盤を確立していく。

 同町によると、同校舎は閉校時から未利用の状態が続いていたが、災害時の避難所に定めていることなどから、水道、電気などの維持費用が年間約70万円かかっている。校舎を解体する場合は5千万円以上の費用を要するため、利活用の推進が急務となっていた。

 同町教育委員会によると、同町の生徒数(中学生)は2006年度の452人をピークに減少。01年に閉校した倉尾中をはじめ、16年に長若、小鹿野、三田川、両神の4中学校を小鹿野中に統廃合した。現在の生徒数は298人となっている。

 同町はこれまでに各廃校舎の特徴を生かした利活用事業を展開。校庭が広く、校舎の屋上からの景色に優れた旧三田川中は、テレビCMなどのロケ撮影所として貸し出し、使用料で校舎の維持費用を賄っている。また、花火大会など町のイベント会場にも使っている。

 町役場両神庁舎に隣接する旧両神中は、町内の文化財収蔵庫などに活用し、将来的には展示場としての整備を検討。旧倉尾中の体育館地下は昨年、蜂蜜酒(ミード)醸造所に改修。元地域おこし協力隊の工藤エレナさんが、地元産蜂蜜酒の製造に取り組んでいる。

 旧長若中は1988年に建築され、廃校中学の中で最も新しい校舎。同町は賃貸料無料で校舎の活用を希望する事業者を公募したところ、リングローから申し込みがあった。校舎を貸し出すことで、維持費の軽減が図れる。「空き教室をオフィスとして利用する町外事業者が増えれば、移住定住の促進も期待できる」と、同町の担当者は語る。

 同社は現在、廃校を利活用した「おかえり集学校プロジェクト」を全国11校で展開。県内で手がけるのは旧長若中が初となる。同プロジェクトマネジャーの福手直人さん(30)は「パソコン関連事業などを展開しつつ、避難所や地域イベント会場としての機能は維持し、町民の心のよりどころになる施設として運営していく」と話している。

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