埼玉新聞

 

埼玉なのに「03」…電話番号に違和感、男性が録音した詐欺電話を公開 つい信じそうになった相手の声

  • 川口署の岩崎茂署長から感謝状を受け取る男性(左)=川口署

 頻発する特殊詐欺の被害防止対策の一環として、県警は県内で発生した還付金詐欺犯行電話の音声データを県警のホームページ(HP)で公開している。広く還付金詐欺への注意喚起を促すのが狙い。録音データを提供した男性は被害はなかったものの、「慣れた話し方で、信じていたかもしれない」と回想した。

 電話は8月3日、川口市居住の40代男性宅へ、市役所職員に成り済ました犯人からかかってきたもので、男性がこの時の会話を録音していた。

 犯人「もしもし、おはようございます。私、○○市役所健康保険課の○○と申します。○○様のご自宅でお間違いないでしょうか?」

 犯人は丁寧な口調で説明を始める。

 犯人「本日確認のお電話になるのですが、今年4月ごろにこちらから○○様のご自宅に累積医療費のご案内と書かれた封筒をお送りしているのですが、封筒の中身は確認してもらえましたでしょうか」

 男性「すみません。もう一度、お願いします。何という書類ですか?」

 犯人「累積医療費のご案内ですね」

 男性「累積医療費?いや、届いてないと思います」

 犯人は4月には男性宅に封筒を送った記録が残っていると主張。やりとりを続ける。

 犯人「あの、こちらの封筒の中にですね、ご返信が必要な申請書が同封されていたんですが、その申請書の提出期限がですね、6月30日までとなっておりまして、まだ○○様からのご返信が頂けてないので、お電話したんですが」

 男性「そうだったんですね」

 犯人「あの書類の内容は覚えてらっしゃいますか?」

 男性「いや、それ自体、見ていないと思うんですけど」

 会話がかみ合わず、還付金名目の現金をだまし取れないと観念したのか、犯人は次のように言って電話を切った。

 「ああ、そうですか。ではまた私の方でも確認を致しますので、○○様の方でも今一度、確認の方をよろしくお願い致します」

 音声データは1分44秒。実際に被害はなかった。

 取材に応じた男性は「慣れた話し方だったので、もしかしたら、信じてしまっていたかもしれない」と振り返る。

 ただ、着信番号は市役所職員を名乗っているにも関わらず、東京都の市外局番の「03」であったことに違和感を感じたという。犯人が名乗った市役所の健康保険課に電話をかけたところ、当該の人物がいないことが発覚し、詐欺であることが判明した。

 仕事の都合上、通話内容を録音していたという男性。音声をHPで公開することについて「詐欺のリアルな会話を聞いて、少しでも被害に遭う人を減らせたらうれしい」とした上で「違和感を感じたら、一度家族や自治体などに確認や相談をすることが大切」と警鐘を鳴らした。音声は専用ページ(https://www.police.pref.saitama.lg.jp/c0010/kurashi/kanpuonsei.html)で公開されている。

 県警特殊詐欺総合対策本部によると、今年の県内の特殊詐欺被害認知件数は9月15日時点の速報値で892件で、前年同期比177件増加。被害額は約18億2594万円に上る(同比約2億117万円増)。還付金詐欺は156件で、30件増えている。同本部は「市役所、区役所が還付金をATMに払い込むことはない。そういう電話があったらまずは詐欺を疑い、警察に連絡してほしい」としている。

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