埼玉新聞

 

祭り契機に戻れ活気 「待ちに待った」川越まつり閉幕 コロナ対策模索の中にぎわい、外国人観光客の姿も

  • 曳っかわせをする3台の山車。恒例だった引き手たちが山車の間に密集し、盛り上げる行為は自粛された=16日、埼玉県川越市幸町の川越一番街商店街

 3年ぶりの川越まつりが16日、閉幕した。昨年と一昨年は新型コロナウイルス感染拡大で中止。今秋は感染防止対策を講じながらも、川越市制施行100周年を記念し、全29台の山車が巡行する盛大な催しとなった。県内屈指の観光地はコロナ禍で苦しんだだけに、完全回復のきっかけになることを願っている。

 市内随一の人気スポットである同市幸町の川越一番街商店街でかつお節店「中市本店」を営む落合康信さん(53)は、2台の山車を持つ幸町でまつりの役員を務めながら、次々と店を訪れる客に対応した。「生まれ育った地元なので協力している。昨日は夕方から店が特に忙しく、やはり川越まつりの売上は大きいのだと実感した」と喜ぶ。

 いもせんべいで知られる同市松江町の菓子店「東洋堂」社長の戸田真一さん(60)も、今年は「浦嶋の山車」を所有する松江町2丁目で年行事代表を任される。山車の巡行に同行しつつ、空いた時間は店頭にも立った。「待ちに待ったまつり」と声が弾む。店は昨年夏ごろ感染拡大の影響を最も大きく受け、コロナ禍前より60%ほど売上が落ち込んだ。「今年になって回復してきたが、やっと本格的に戻ったようだ」と言う。

 政府の入国制限が11日に大幅緩和され、来場客に外国人も見られるようになった。「インバウンド需要にはすごく期待している」と戸田さん。落合さんは「まつりで訪れた人に川越の魅力を知ってもらい、コロナ前のようなにぎわいになれば」と願った。

 新しい試みもある。市内の城北埼玉中学・高校は、高校のフロンティアコース1年生の生徒23人が、5班に分かれて初参加。担い手の少子高齢化が課題という元町2丁目の「山王の山車」を引いた。引率した田辺峰晶教諭(35)は「実際に町の人たちの中へ入っていく機会は貴重」と力を込める。生徒で朝霞市に住む大塚純さん(16)は「近所の人同士が、まつりを通して関係を深めていることが分かった」と気付きを得た。

 松江町1丁目の「龍神の山車」は大改修を終え、コロナ前の18年以来、4年ぶりに雄姿を披露した。同自治会会長の鹿戸聖司さん(73)は「町内の皆さんの浄財で立派な山車になった」と感慨深げ。ただ、今年は感染防止策として、各町の拠点となる会所で巡行後に恒例の飲酒や食事を伴う直会などは行わない。鹿戸さんは「仕方ないが、コミュニケーションを図る大切な場。まつりで一番大切な要素が戻っていない」と話す。

 曳(ひ)っかわせの制限もあり、ウィズ・コロナを模索しながらのまつり開催となった。川越市山車保有町内協議会会長の井上誠一郎さん(85)は「各町が趣旨を理解し、守ってくれている。2日間天気に恵まれ、無事開けたのが何より」とほほ笑んだ。

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