埼玉新聞

 

地域との縁、芋づる式に…川越の作業所「いもの子」が干し芋製造 収穫期は自家農園のサツマイモ使用

  • 丹精込めて作った干し芋をPRする障害者たち=10月31日、川越市石田の第4川越いもの子作業所

  • 職員にサポートされながら皮むき作業を行う障害者たち=10月31日、川越市石田の第4川越いもの子作業所

 障害者が干し芋作りに取り組んでいる。川越市内で作業所やグループホームなどを運営する社会福祉法人皆の郷は昨年7月から、同市石田で第4川越いもの子作業所を稼働。名産のサツマイモを使った初の独自商品として、製造に乗り出した。おしゃれに包装された黄金色に輝く干し芋は、従来のイメージを覆すこだわりの品。地元の名物にちなんだ菓子作りを通じて、障害があっても地域社会の一員として心豊かに暮らしたいとの願いが込められている。

■黄金色の輝き追求

 完成して1年余りの新しい工場の隣には、2200平方メートルのサツマイモ畑が広がり、収穫期を迎えたブランド品種「紅はるか」が葉を茂らせている。工場内では知的や精神などの障害がある18~59歳までの11人(男性9人、女性2人)が、職員の支援を受けて働く。この日の午前は、蒸したサツマイモの皮むき作業。美しく仕上げるために最も重要な工程で、実の35%ほどを分厚く削り取る。

 特別支援学校を卒業して2年目で、市内の自宅から通う山本紗弥香さん(20)は、製造開始時から携わっているメンバー。「最初は難しかったけれど、だいぶ慣れてきた。見た目がきれいにできるとうれしい」と瞳が輝く。

■活躍の機会を提供

 皆の郷は1986年、障害者の親たちが地元に学校卒業後の居場所を設けようと、「川越いもの子作業所をつくる会」を発足したのが始まり。障害者のニーズに応じて、働き、暮らす場を整備してきた。干し芋工場は、障害者が働ける環境をさらに増やすため、2016年にスタートした第7期将来構想に従って建設。第4川越いもの子作業所の小林幸路施設長(46)は「川越の作業所だから、サツマイモでお菓子を作ろうと。三十数年たってようやく、名前の通りサツマイモの自主商品にたどり着いた」と話す。

 干し芋を選んだのは、市内で売っている多種多様な芋菓子で、干し芋はほとんどが県外の会社が製造したものだったからだ。さらに、オートメーション化が難しく、作業工程に人手が必要となるため、障害者が活躍する機会をたくさん提供できるという。

■つながるツールに

 干し芋は80グラム(税込み400円)など3種類の容量パックを市内5カ所で販売。現在はサツマイモの長期保存が可能な大規模施設が県内にはなく、作業所の畑で育てたものを使えるのは収穫期に限られる。だが、将来は全てを自分たちの農園や近隣産のサツマイモで賄うのが目標だ。

 法人の市内グループホームで暮らしながら8月から働く町田大和さん(49)は、「喜んで買ってくれる人が増えてうれしい。僕たちの干し芋を食べて、川越はいい所だと思ってくれれば」と願う。同施設長は「干し芋は地域とつながるツール。私たちも川越の芋文化を盛り上げる役に立ちたい」と掲げた。

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