三島由紀夫からヤマノススメまで…「どこから掘り下げても奥深い」 飯能・天覧山の歴史たどる特別展
関東山地の東端に位置し、山頂からは関東平野が一望できる飯能市を代表する山、天覧山(標高197メートル)。登山口から山頂まで20分程度で登れる手軽さから、県内外から多くの人がハイキングに訪れる人気の山で、三島由紀夫らの作品にも取り上げられてきた。近年はアニメ「ヤマノススメ」の主要舞台としても知られる。今年は県の名勝指定から100周年。自然や文化、歴史などさまざまな視点から天覧山を見つめ直そうと、飯能市立博物館は特別展を12月11日まで開催している。担当者は「市のシンボルである展覧山のユニークさを見てほしい」と話す。
特別展は「天覧山の自然とその成り立ち」や「『舞台』としての天覧山」など5章構成で、5人の学芸員がそれぞれの専門分野に基づき、多角的な視点から掘り下げた。
天覧山で採取した植物やチャート(堆積岩)を展示・解説したパートでは、かつて天覧山に自生していたハンノウツツジの標本や県の天然記念物に指定されるハンノウザサといった固有の植物の展示を通して、天覧山の豊かな自然を学ぶことができる。
天覧山の文化や成り立ちに迫るパートでは、かつて「愛宕山」や「羅漢山」と呼ばれていた背景や、いつ頃から「天覧山」と呼ばれるようになったかなどについて、古文書や公文書を照らしながら解説。宮内庁所有の明治天皇の行幸ルートを記録した「明治16年幸啓録六」など貴重な資料の原本も展示されている。
続くパートでは、“日本の公園の父”として知られる本多静六の「飯能遊覧地設計」にスポットライトを当て、本多の計画が天覧山の名勝指定につながったことなどを解説。幻となった計画がもし全て実現していたらどうなっていたかをイラストで示した。
また、文化的背景として、かつて天覧山の麓にあった割烹旅館「東雲亭」と国民宿舎「覧山荘」を振り返るほか、三島や田山花袋といった文人が作中で描いた天覧山を紹介するパートも設置。三島の「創作ノート」などが展示され、ヤマノススメのポスターやグッズなども飾られている。
市立博物館の担当者によれば「ヤマノススメの影響で長野や大阪から来館された人もいる」といい「歴史、文化、自然のどこから掘り下げても奥深い山はそうない。市のシンボルである展覧山のユニークさを見てほしい」と語った。
午前9時~午後5時。毎週月曜日休館。問い合わせは、同博物館(電話042・972・1414)へ。