埼玉新聞

 

難聴の高校生らが甲子園目指す…実話が舞台 「風疹予防の大切さ知って」和光で上演、医師ら市民が企画

  • 関西芸術座の上演した「遥かなる甲子園」のワンシーン

 先天性風疹症候群により難聴になった高校生らが甲子園を目指した実話を元に制作された関西芸術座の舞台劇「遥(はる)かなる甲子園」が8月4日、和光市で上演される。同症候群の実情と予防接種の大切さを広く知ってもらい、ノーマライゼーションの実現を目指そうと、同症候群による軽度の障害を負っている和光市の医師天野教之さん(60)ら市民が実行委員会を結成し、企画した。入場無料。

 遥かなる甲子園は、沖縄に実在にあった聾(ろう)学校を題材にしている。1965年に沖縄で風疹が大流行。数百人の子どもが先天性風疹症候群となり、難聴となった。このため、1学年だけ聾学校が設立され、この生徒らが高校に進学した際、甲子園を目指した。高校野球憲章は聾学校の参加を認めていなかったため、周囲のさまざまな努力により県大会に出場することになる。

 生徒をはじめ教諭ら周囲の奮闘を描いた青春ドラマで、実話を基にして小説をはじめコミックや映画化などもされており、舞台劇は関西芸術座が全国で巡演している。

 妊娠中に風疹を患った母親と先天性風疹症候群の当事者らで組織した市民団体「風疹をなくそうの会」がクラウドファンディングを活用して、今年1月に大阪、2月に東京でそれぞれを上演。これを知った天野さんが地元医師会や主婦らに呼び掛け企画した。

 天野さんは幼少期から生活に支障はないものの、軽度の白内障を患っており、先天性風疹症候群の可能性を指摘されている。天野さんは「公演を見ることで、風疹予防の大切さを広く知ってもらい、聴覚障害について理解を深める機会にしてもらえれば」と話している。

 公演は8月4日午後1時半から、和光市広沢の市民文化センター「サンアゼリア」で上演される。申し込みは「http:www.morimori.or.jp/harukana.html」。

 問い合わせは、天野さん(電話090・4412・1321)へ。

■先天性風疹症候群

 風疹は強い感染力を持つ風疹ウイルスにより起こる急性の発疹性感染症。妊娠中の女性が罹患(りかん)すると胎児も風疹に罹患し、先天性風疹症候群となり、心臓や視力、聴力に障害が出ることがある。同症候群の防止には、風疹の流行を防ぐために免疫を持たない人にワクチン接種をすることが最も効果的とされる。

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